2005 Fiscal Year Annual Research Report
『プラマーナサムッチャヤ』第3-4章後段の研究-哲学諸派形成期の思想解明-
Project/Area Number |
05J07034
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
渡邉 俊和 筑波大学, 大学院・人文科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ディグナーガ / プラマーナサムッチャヤ / ジネーンドラブッディ |
Research Abstract |
二種の不完全なチベット訳からプラマーナサムッチャヤ(PS)、特にダルマキールティが説明を加えていないその後段を理解するためにはPSに対するジネーンドラブッディ注(PST)を利用することが不可欠である。幸いにしてPSTの第3章については2004年末から、龍谷大学の桂紹隆教授のもとで校訂テキスト作成のための研究会が開催されており、報告者はこれに定期的なメンバーとして参加・協力している。当該研究会を通じてPSTの前半部を詳細に検討することにより、PSTが、ダルマキールティがPSに解説を加えている箇所について言えばそのほとんどをダルマキールティと、それに対する比較的古い時代に属する注釈者達(デーヴェーンドラブッディ、シャーキャブッディ)の著作から抜粋し、それに若干の追加を加えたものであることが明らかとなった。更に、ジネーンドラブッディが他の論書からの借用を行っていない箇所について、後代のヴィブーティチャンドラがそれを引用しているという点も、仏教論理学の系譜を考えるにあたり興味深い。 PSTを扱う際には常にダルマキールティによる解釈のフィルターを意識しなければならない。報告者は、論証に対するディグナーガとダルマキールティの態度の差を、PS第3章12偈へのダルマキールティの説明を検討することによって明らかにし、国際学会において発表している。前者が因の三相説を中心に他者との公平な対話のための下地の整備に腐心していたのに対し、後者は、同じく因の三相説を出発点にしながらも、推理の妥当性の根拠となる<本質的結合関係>の普遍妥当性によって推理と論証とを統一的に論じようとしている点に大きな違いがある また、PSTの校訂テキスト作成に必要な資料として、研究会のメンバーの有志でデーヴェーンドラブッディ注(第四章)のテキストデータの入力を行った。これは近日中に公開の予定である。
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