2006 Fiscal Year Annual Research Report
『プラマーナサムッチャヤ』第3-4章後段の研究-哲学諸派形成期の思想解明-
Project/Area Number |
05J07034
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
渡邉 俊和 筑波大学, 大学院人文社会科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ディグナーガ / プラマーナサムッチャヤ / ジネーンドラプッディ / バルトリハリ / サーンキヤ |
Research Abstract |
ディグナーガは仏教論理学・認識論の体系化を行うに際し、しばしば彼以前の論書に見られる概念や術語を用いる。報告者はプラマーナサムッチャヤ(PS)第3章第2偶及びその自注(PSV)で言及される、主張命題の主語と述語の各々に関してのsvarupa・visesaとがその一例にあたることを指摘し、その起源が瑜伽師地論にまで辿れることを明らかにした。 更に、当該PSVで挙げられる、誤った主張命題の一つ(「文は全て、その意味内容が虚偽なものである」)についてのディグナーガの解説が、大文法学者バルトリハリ(5世紀)の見解に対して意識的に批判を加えたものであることをも明らかにした。これについてはインドで開催された国際学会(ICLNNA)にて発表した。 二種の、おそらく伝承系統が異なるチベット訳の難渋さゆえに、PS(V)に関しては、単にそれぞれのテキストを校訂しただけではそこからは内容の理解は得られ難い。従ってジネーンドラブッディの注釈(PST)の利用が必然となる。報告者はこれまでに校訂・翻訳の作業を、PS第3章とPSTとの前段については半分以上、後段については四分の一を既に完了している。当該箇所のPSTで特に注目に値するのは、現存するサーンキヤ学派の論書では明確には確認できない諸説の断片が得られたということである。PST後段の一部についてはFrauwallner博士により既に指摘はされているが、それと重なる若干のものも含め、更に多くの情報が前段から得られる。これらの情報により、サーンキヤ学派独自の帰謬的論証形式であるavitaの、よりプリミティブな形を再構成することも可能となろう。これについては近日中にまとめるつもりである。
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Research Products
(1 results)