2007 Fiscal Year Annual Research Report
『プラマーナサムッチャヤ』第3-4章後段の研究-哲学諸派形成期の思想解明-
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05J07034
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
渡邊 俊和 University of Tsukuba, 大学院・人文社会科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ディグナーガ / プラマーナサムッチャヤ / ジネーンドラブッディ / ヴァスバンドゥ / サーンキヤ / ユクティディーピカー |
Research Abstract |
本年度の研究成果の要点は、以下の二点にまとめられる。 1. ディグナーガの論理学体系にみられる、ヴァスバンドゥ説の継承と改変の解明 2. 仏教論理学からの批判を巡る、サーンキヤ学説の展開の解明 ディグナーガは『プラマーナサムッチャヤ』第三章において、asapaksa(異類)の否定辞を三種に分類し、そのうちの「非存在」が否定辞の意味であると繰り返し説明する。その際、ヴァスバンドゥがavidya(無明)の否定辞を説明する際に提示した七種の分類ならびにその説明を利用している。またディグナーガが、彼にとって最大の論敵であったサーンキヤ学派によるプルシャの存在論証を批判する際にも、ヴァスバンドゥの理論をほぼそのまま援用している。しかしディグナーガは単にそれを利用するだけではなく、〈矛盾因〉の一つとして分類し、その分類方法を他の〈矛盾因〉にも適用させている。 一方、作者不詳の『ユクティディーピカー』には、サーンキヤ学派側からの逐一の再反論が見られる。同書の当該箇所はこれまで正確には理解されていなかったが、仏教説を解読することによりその内容を解明することが可能となった。また、『ユクティディーピカー』にはそれ以降のサーンキヤ学派の論書に用いられるようになる幾つかの理論が既に含まれていることも明らかになった。 以上の研究成果は、『プラマーナサムッチャヤ』に対するジネーンドラブッディの複注を読解し、そこからヴァスバンドゥ説・サーンキヤ学説を抽出することによって得られたものである。これらの成果は、従来の研究では明らかにされなかった、ディグナーガ説と彼以前の説との継続性を指摘するものである。また、サーンキヤ学説の展開への仏教論理学の影響も明らかにしたという点でも重要である。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] On asapaksa2008
Author(s)
渡邉俊和(Watanabe Toshikazu)
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Journal Title
印度学仏教学研究(Journal of Indian and Buddhist Studies) 56・3
Pages: 1145-1151
Peer Reviewed
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