2007 Fiscal Year Annual Research Report
脊椎動物の起源と科学受容系の進化:受容体遺伝子群の進化パターンと進化プロセス
Project/Area Number |
05J07109
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
佐藤 剛毅 University of Tsukuba, 大学院・生命環境科学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | ナメクジウオ / ホヤ / ゲノム / オプシン / 化学受容体遺伝子 / 脊椎動物の起源 |
Research Abstract |
本年度は昨年度まで行ってきたナメクジウオとカタユウレイボヤゲノムに存在する化学受容体遺伝子群とオプシン遺伝子群の同定の結果を受けて、そのシグナル伝達の下流で働く遺伝子の同定およびその配列と発現パターンの比較を行うことにより、受容系全体としての機能面での比較を試みた。特に重要な新知見として、ナメクジウオとホヤでオプシンの脱感作の方途が異なるということを挙げることが出来る。ホヤにはGRK1/7クラスのオプシンキナーゼが備わっているが、ナメクジウオのゲノムには存在しない。そしてホヤGRK1/7遺伝子は光受容器である眼点に特異的に発現する。この結果はホヤでは光子を結合して構造変化を起こしたオプシンが比較的短時間に受容体としての機能を回復する一方で、ナメクジウオのそれはspontaneous decayによってのみ行われることを示している。さらに、脊椎動物の光受容カスケードで機能するタンパク質にはカルシウム結合タンパク質が含まれており、これらは主として明順応に機能している。しかし、ホヤ、ナメクジウオのゲノム中に該当するタンパクをコードする遺伝子を見出すことは出来なかったことから、明順応カスケードは脊椎動物特異的であると考えることができる。 今回の研究で明らかとなった知見を統合し系統樹に沿って解釈すると、光非依存性のベントス型脊索動物の祖先から徐々に様々な遺伝子を獲得することによりあらたな光環境へと進出していった脊索動物の進化史を描き出すことができる。今年度は得られた上記の結果および進化生物学的考察を論文にまとめ、投稿した。
|