2005 Fiscal Year Annual Research Report
脊椎動物の起源と化学受容系の進化:受容体遺伝子群の進化パターンと進化プロセス
Project/Area Number |
05J07109
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
佐藤 剛毅 筑波大学, 大学院・生命環境科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ナメクジウオ / ホヤ / GPCR遺伝子群 / オプシン / 分子進化 |
Research Abstract |
本年度はGPCR遺伝子群の進化ダイナミクスの一端を明らかにする目的でオプシン遺伝子に着目して研究を行った。後生動物の光受容細胞はCiliary型とRhabdomeric型に大別され、オプシン遺伝子もCiliaryタイプ、Rhabdomericタイプを含む4タイプに分子系統学的に分けることができる。Ciliary型光受容細胞は脊椎動物に多く見られ、Rhabdomeric型光受容細胞は無脊椎動物に多く見られるが、脊椎動物の姉妹群である頭索類(ナメクジウオ類)では両細胞を併せ持つ。そこで、ナメクジウオ類のオプシン遺伝子群を含めた分子系統学的解析からオプシン遺伝子群の分子進化ならびに光受容細胞の進化に関して興味深い知見が得られることが期待される。 共同研究者らによる先行研究の結果も含めると、ナメクジウオ類は少なくとも7種のオプシン遺伝子を持つことがPCRなどを介したクローニングによって明らかとなったほか、分子系統学的解析から上記7種のオプシン遺伝子を4タイプにアサインすることができた。In situハイブリダイゼーション法によって各々の遺伝子の発現を解析したところ、CiliaryタイプはCiliary型光受容細胞でRhabdomericタイプはRhabdomeric型光受容細胞で発現することを確認した。さらに、Ciliaryタイプオプシンの姉妹群を形成するGo-coupledタイプオプシン遺伝子もCiliary型光受容細胞で発現した。この結果はCiliary型光受容細胞で発現するオプシン遺伝子は進化的に異なる2つの系統から成り立つことを意味するが、今までに解析された全ての脊椎動物にはGo-coupledタイプのオプシン遺伝子は存在しない。これは脊椎動物が起源する段階で1つのCiliaryオプシン系統が途絶えた一方で、多様な脊椎動物のCiliaryタイプオプシン遺伝子のレパートリーは限られた数の祖先遺伝子から度重なる遺伝子重複を経て形作られたことを示唆する。上記の結果を論文にまとめ、現在投稿中である。また、脊椎動物の起源と化学受容系の進化との関連を欧文と邦文の2本の論文において議論し、発表した。
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Research Products
(2 results)