2005 Fiscal Year Annual Research Report
日本近代文学研究の中でも特に大岡昇平の文学を中心として第二次世界大戦後文学の研究
Project/Area Number |
05J07146
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
関塚 誠 筑波大学, 人文社会科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 日本近代文学 / 第二次世界大戦 / フィリピン / アメリカ / 同時代読者 |
Research Abstract |
本研究は、日本近代文学の中でも特に大岡昇平の文学作品を、第二次世界大戦後文学の大きな流れの中に位置づけようとするものである。 まず、現在戦後文学の代表作品として多くの批評家から評価される『俘虜記』(昭和23年2月「文学界」)について、発表された同時代の基礎データを収集した。そして『俘虜記』が発表当時から高い評価を受けていたことを証拠づける資料について多数発見できた。 また、近年刊行が終了した筑摩書房版の『大岡昇平全集』にリストアップされた参考文献だけでなく、大岡の周辺の批評家たちの発言や、読者のページなどにまで目配せをするよう気をつけた。その結果として、現在の文学史から埋もれてしまったような作品との関連から作品をとらえる試みへと、課題が発展している。調査には神奈川近代文学館の所蔵資料が多く役立っている。 これらの成果をふまえて、過日の日本近代文学会大会で実施した研究発表につなげて論文を執筆中である。 この研究が、第二次世界大戦後文学の中でも大岡昇平をその中心的存在に位置づけるものと考えている。大岡は当時のいわゆる知識人として戦場を経験し、それらを文学化した作品が多くの読者に受け入れられたといえる。同時代に評価を受けていた同じような作品と比べて、戦場となったアジア、敵として対峙した西洋文明との関わりは現在の文学研究の水準からも特徴的である。そのことを位置づけるため、関連書籍の購入と分析をしている。
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