2005 Fiscal Year Annual Research Report
新機能を有する水素結合系の合成と光反応ダイナミクスの解明および生体機能系への展開
Project/Area Number |
05J07233
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
金田 芳 筑波大学, 大学院・数理物質科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 分子内水素結合 / 分子内水素原子移動反応 / 異性化 / レーザー分光 / デンドリマー |
Research Abstract |
生体機能分子モデルや複合機能分子構築を念頭に置いた水素結合系巨大分子の光化学反応ダイナミクスの解明を目的とし、分子内水素結合およびC=C二重結合を含むフラボノイド色素、2'-ヒドロキシカルコン(HC)をコアに有するデンドリマーを1世代(G1)から4世代(G4)まで合成した。デンドリマーの特色は、内部環境や分子量を均一にコントロールできるという点にあり、ある特定の現象を追跡するには非常に適した環境場を構築することができる。本研究では、各世代HCデンドリマー(G1-G4)の光化学反応における世代効果について、各種光化学的測定により検討を行った。 無置換HC及び各世代HCデンドリマーの吸収スペクトルを比較した結果、HCの吸収極大が310nm付近に現れるのに対し、HCデンドリマーはいずれも370nm-400nmに吸収極大を持つことがわかった。特に、4世代(G4)は550nm付近まで吸収力槻測されるという、著しい長波長シフトを示した。また、XeClエキシマーレーザー308nm光分解により、過渡吸収スペクトル測定を行った結果、無置換HCでは600nm付近に励起三重項過渡種(τ_T=1μs)が観測されたが、高世代HCデンドリマーでは、励起三重項状態が長寿命化(τ_T=4-5μs)し、G4においては約40μsという寿命を示すことが明らかになった。HCは励起三重項状態にて、C=C二重結合部位の異性化反応が起こることを既に報告しているが、デンドリマー化することにより、その異性化反応が著しく抑制され、励起三重項状態の長寿命化が観測されたものと考えられる。 このように、HCのデンドリマー化により、光化学的性質の著しい変化が観測された。現在、この高世代デンドリマーの特異な光化学的挙動の詳細なメカニズムについて、さらなる研究を行っている。
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