2007 Fiscal Year Annual Research Report
ハンナ・アーレントにおけるthinkingの政治的役割
Project/Area Number |
05J07294
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
平井 毅 University of Tsukuba, 大学院・人文社会科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ハンナ・アーレント / 政治学 / 物語 / 思考 / 政治思想 / 理解 / ドイツ:アメリカ |
Research Abstract |
平成19年度の本研究では、前年度に引き続きハンナ・アーレントの思考thinking概念と物語論との関係を考究しつつ、アーレントの物語論を他の思想家や研究と絡めて比較・分析した。 1、前年度は、ソクラテスに関するアーレントの議論を念頭に置きながら、思考と政治的経験の記憶の問題、また政治的経験の受け継ぎの問題を考究した。 2、本年度は前年度に引き続き、『過去と未来の間』を参照しつつ、思考と政治的経験の記憶・受け継ぎの関係を考究した。アーレントは『過去と未来の間』以降、政治的活動それ自体を経験することだけではなく、その経験を事後的に思考することの意義を強調するようになった。思考の政治的働きは、政治的活動が行われた後に、それに関して思考し、問いかけ、意味を取り出していくこととしてアーレントに意識されていったのである。『過去と未来の間』という書物自体、アーレントによる思考の政治的実践の試みであった。前年度に注目していたのは、この思考の政治的実践とアーレントの物語ることとの密接な結びつきであった。本年度はまず、思考が政治的役割を果たす様式としての、物語るという行為に関するアーレントの議論を検証し、彼女の物語論を分析した。そして思考の政治的実践としてのアーレントの物語論を、他の思想家や歴史学者の物語論と比較・検証しつつ、その特異性と意義を考究することで、アーレントにおけるthinkingの政治的役割の一面を明らかにすることができた。
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