2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J07301
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
若林 真衣子 筑波大学, 大学院人間総合科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | アルコール依存症 / 性差 / 自己意識 |
Research Abstract |
本年度は昨年度より行っている研究を論文としてまとめた.研究の概要は以下の通りである. 近年女性のアルコール依存症者(以下ア症者)が増えている中,回復期ア症者治療の中心である自助グループにおけるア症者の自助グループ活動継続率には性差がある.また,わが国のア症研究における男女のサンプリングには偏りがあり,ア症者における男女の相違点が明らかとなっていない状況である.自助グループへの参加が現在ア症者の回復に有効であるとされている中,自助グループ会員を対象とした,男女の相違点を調査する研究が行なわれていないのは問題であると考えられる.本研究では,ア症の集団治療への参加に大きくかかわる対人不安の基盤となる自己意識に注目し,男性ア症者と女性ア症者との共通点及び相違点を明らかすることを目的とし,自助グループ会員を中心としたア症者143名(男性114名,女性29名)を分析対象とした.まず性差について,公的自己意識・私的自己意識共に尺度の総合得点と性別の間に関係はみられなかった.性差がなかったことはひとつの問題を提示している.なぜなら,現行のア症治療に有効とされている方法は男性ア症者と類似した自己意識の状態の者でなくては有効ではない可能性が考えられるからである.ただし本研究の結果により,現在断酒継続できているア症者については自己意識における共通点が多いことが明らかとなったため,治療導入期のアプローチにおいて,ア症者の自己意識が指針としての役割を果たしうる可能性も示唆された.しかしながら留意すべき相違点もあり,断酒期間3年未満の女性ア症者は公的自己意識が高く,自助グループ活動参加頻度が男性ア症者より少なかったなど,女性ア症者の集団治療及び自助グループ入会への導入に関して,医療・行政を始めとした援助者がより慎重にサポートしていく必要性が示唆された.
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Research Products
(1 results)