Research Abstract |
アクチン脱重合能を有する抗腫瘍性物質アプリロニンA(apA)の,アクチンに対する結合部位を明らかにする事を目的とし,研究を行った. 1.光親和性標識実験 apAのアクチン脱重合能に重要な部分構造である側鎖部をリガンドとし,光親和性基,蛍光基を有するプローブ分子を設計し,合成した.従来,光親和性標識実験では,検出基としてビオチンや放射性同位体を導入したプローブが用いられる.本研究では,より簡便に検出が可能な蛍光基を検出基とし,効率的なプローブ法の開発を目指した. 合成プローブとアクチンの光標識反応により得られた反応混合物を電気泳動分析すると,アクチンの分子量に相当する位置に蛍光を持つバンドが観測された.このことから,アクチンがプローブにより標識されたことを示した.apA添加条件で光標識反応を行うと,光標識が阻害された,すなわち,プローブとapAがアクチンに対し同じ部位に結合することを示した.市販のアクチン脱重合分子,ミカロライドB(myB)とサイトカラシンD(CD)添加条件でそれぞれ光標識反応を行うと,myBは光標識を阻害し,CDは阻害しなかった.従って,myBは,apAと同じ位置でアクチンと結合し,CDは,これらマクロライドとは異なる位置に結合することを化学的に明らかとした. 2.X線結晶構造解析 アクチン-apA複合体のX線結晶構造解析により,結晶中でのアクチンに対するapA結合部位を明らかとした.結晶中でのapA結合部位は,myBに代表されるアクチン脱重合マクロライドの結合部位と一致した. 以上二つの実験から,アクチンに対するapAの結合部位が,既存のアクチン脱重合マクロライドの結合部位と一致することを示した. 今後は,apAとアクチンの相互作用を詳細に検討し,apAの抗腫瘍性発現機構を解明する予定である.
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