2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J07340
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
高梨 和憲 筑波大学, 大学院・数理物質科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 有機化学 / 多元素環状分子 / 芳香族性 / ケイ素 / シクロブタジエン / 鉄 / コバルト / ルテニウム |
Research Abstract |
多元素環状分子は多元素から分子が構成される故に多様な分子設計が可能であり、同一元素からなる分子では考えられない物性を示すことが期待され、分子を創造するという観点から非常に重要かつ魅力的なターゲットである。本研究では高周期14族元素4員環状ジアニオン種を鍵反応剤として新しい多元素環状分子を合成する。その構造、性質を解明し、高周期典型元素環状化合物の系統的な理解を深め、一般性の高い元素論の構築を目指したものである。そこで、本年度はこれまでに無い高周期14族元素環状ポリエン配位子であるテトラシラシクロブタジエン遷移金属錯体に関する研究を行った。 シクロブタジエンは有機化学の最も基本的な共役環状分子であることから、古くから精力的に研究されてきており、反芳香族化合物であることが明らかにされている。この反芳香族性を解消する手法の一つが遷移金属に配位させることであり、そのシクロブタジエンの骨格元素を全てケイ素に置き換えた錯体の合成を行った。合成としては、本研究課題の鍵化合物であるシクロブタジエンジアニオンケイ素類縁体を前駆体とし、テトラシラシクロブタジエンを配位子としたジカルボニルコバルトアニオン錯体、シクロペンタジエニルコバルト錯体、トリカルボニルルテニウム錯体を合成した。また、シクロブタジエンジアニオンの前駆体であるジブロモ体から対応するトリカルボニル鉄錯体を合成した。 全ての錯体はX線構造解析によりその分子構造を明らかにし、テトラシラシクロブタジエン配位子がη^4-型で配位していることを明らかにした。また、各種スペクトル解析、理論計算からテトラシラシクロブタジエンは、シクロブタジエン配位子よりも強い供与、逆供与性を示す特異的な特徴を有することを明らかにした。さらに、理論計算の結果、これらの錯体はメタロアロマティシティーを有することを明らかにし、高周期14族元素の芳香族性の概念に新たな概念を与えた。
|
Research Products
(2 results)