2005 Fiscal Year Annual Research Report
風景と地図:16世紀ネーデルラントにおける風景表現の展開と同時代の精神世界
Project/Area Number |
05J07376
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
廣川 暁生 お茶の水女子大学, 文教育学部, 特別研究員PD
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Keywords | ネーデルラント / 16世紀 / 風景 |
Research Abstract |
本年度は資料収集、調査のため、2度ベルギーを訪れた。 第一回目、6月30日-7月6日(私費)においては、16世紀、風景版画の出版状況を明らかにするため、ブリュッセル王立図書館及びブリュッセル自由大学付属図書館において、ヒエロニムス・コックの版画店出版目録の調査を行った。特に「大風景画」及び「小風景画」シリーズというほぼ同時期に刊行された様式の異なる2つのシリーズを対象に、作品分析と版両に付されたテクストの解読、同時代の地図帳との具体的な図像の借用、用途上の類似性の分析を通し、シリーズ制作の意図及び機能、後世に及ぼした影響を体系的に辿った。同時に、ブリュッセル王立図書館所蔵の美術理論書、マンデルの芸術論(1604年)に記された風景理論の分析を通し、当時の風景概念と風景表現の相関関係を具体的に検証し、マンデルの著作の中でモデルとして推奨されるブリューゲルの風景表現が、17世紀の風景画に及ぼした影響について考察した。以上の調査研究は、「ブリューゲル風景版画とその模倣に関する一考察」にまとめ、お茶の水女子大学、『人間文化論叢』第7巻(2005年度)に収録が決定している。 第二回目は1月14日-22日(科学研究費)の日程で行った。先の調査で明らかになった、16世紀の風景表現の展開における「都市から田園へ」という流れの中で、16世紀の都市の機能、特にアントワープの都市表象に焦点を当て、テクスト、図像の両面から資料を調査、収集した。現在は収集した資料の解析を続行中であるが、本調査の成果は2006年7月に予定されている、お茶の水女子大学比較研究センター主催の比較日本学シンポジウムにおいて発表を予定している。当シンポジウムは、日本における都市表象を研究しているフランス人研究者等を同時に招聘し、比較文化の観点において行われるものである。発表に先立ち、3月29日にクレルモンフェランで行われる、日本学シンポジウムに参加し、お茶の水女子大学、ロール・シュワルツ助教授をはじめ日仏の日本学研究者との意見交換を行う予定である。
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