2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J07390
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
武次 ゆり子 北海道大学, 大学院理学研究院, 特別研究員(PD)
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Keywords | 希ガス化合物 / ab initio / 分子軌道法 / 相対論効果 |
Research Abstract |
希ガスが化合物を生成するメカニズムを探るため、希ガスと最もシンプルな形で結合を生成する元素であるPtを対象に選び、PtNg及びPtNg_2(Ng=Ar, Kr, Xe)分子の平衡構造近傍のポテンシャル曲面を決定し、非調和効果を考慮した振動回転準位を求めた。NgPt及びNgPtNg(Ng=Ar, Kr, Xe)分子に対しCCSD(T)法を用いて基底関数重ね合わせ誤差(BSSE)補正を含む構造最適化及び振動解析を行った。相対論効果は二次Douglas-Kroll法により考慮した。基底関数は土屋らの相対論最小基底をsplitし、関谷らの分極関数を加えて用いた。CCSD(T)計算ではPtの5s,5p軌道からの内殻励起も考慮した。電子状態計算はMOLPROを用いて行い、平衡構造近傍のポテンシャル曲面を決定した。NgPtの分光定数はVIBROT(MOLCAS)を用いて求め、NgPtNgの分光定数はRVIB3を用いて求めた。 Ptの基底状態は^3D((5d)^9(6s)^1)であり、第一、第二励起状態はそれぞれ^1S((5d)^<10>),^3F((5d)^8(6s)^2)である。CCSD(T)レベルの^1Sと^3Dのエネルギー差はPtの5s,5p軌道からの励起も考慮すると8.5kcal/molとなる。PtNg、PtNg_2分子の基底状態は^1Σであり結合エネルギーはPtAr, PtKr, PtXe分子のそれぞれに対して7.3,12.8,22.1kcal/mol、PtAr_2,PtKr_2,PtXe_2分子のそれぞれに対して19.7,29.4,44.9kcal/molであった。PtAr(^1Σ)のポテンシャルエネルギー曲線の最小値はPt(^3D)+Arの解離極限よりも高くPtAr(^1Σ)が分子として存在する可能性は低いが、PtAr_2(^1Σ)分子のエネルギー最小値はPt(^3D)+2Arの解離極限よりも8.2kcal/mol低い。Pt(^3D)スピン軌道結合による分裂を考慮すれば結合エネルギーは6.0kcal/molほど小さくなる可能性があるが、PtAr_2,PtKr_2,PtXe_2分子の結合エネルギーは充分に大きく、分子として安定に存在する可能性は非常に高いと言える。NgPt, NgPtNgのポテンシャルエネルギー曲面より分光定数の非調和効果を考慮した振動回転準位も求め、これらの結果を総括し論文誌へ投稿した。
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