2006 Fiscal Year Annual Research Report
情動発現の神経基盤及びその制御機構の解明-前頭眼窩野とドーパミンに着目して-
Project/Area Number |
05J07478
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松永 昌宏 名古屋大学, 環境学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ポジティブ感情 / 前頭眼窩野 / ドーパミン / NK細胞活性 / PET / 遺伝子多型 |
Research Abstract |
「病は気から」という言葉に現れるように、人間の感情と身体とは密接に関連している。最近の研究では、ポジティブ感情を普段から多く喚起している人たちは風邪をひきにくく健康であるという報告があり、ポジティブ感情に伴う脳-免疫関連が示唆されている。しかしながら、こうしたポジティブ感情発現の脳内神経基盤及び脳-免疫関連の神経基盤については不明な点が多い。そこで本研究では、Positron Emission Tomography (PET)を用いて、ポジティブ感情発現の脳内神経基盤と脳-免疫関連の神経基盤を探求することを試みた。さらに、そうした脳と身体の関連における個人差を説明するために遺伝子多型による解析も行った。 本研究では、被験者が好きな人(憧れの人)を見た時に経験するポジティブ感情に着目し、ポジティブ感情喚起中の脳活動と、それに伴う気分状態の変化、血中ホルモン濃度の変化及び自然免疫系ナチュラルキラー(NK)細胞活性の変化を解析した。その結果、ポジティブ感情喚起時には前頭前野、前頭眼窩野、視床下部、腹側被蓋野などの脳内報酬系が活性化し、血中ドーパミン濃度及びNK細胞活性が上昇した。さらに興味深い事に、前頭眼窩野の活性とNK細胞活性の上昇には相関が見られた。これらの結果から、好きな人を見た時に経験するポジティブ感情は脳内報酬系の活性化により生じるものであり、前頭眼窩野の活性化に伴い末梢NK細胞活性を上昇させることが分かった。また、こうした脳-免疫関連はドーパミン神経系を介した反応であることが示唆された。 また、セロトニン関連遺伝子であるセロトニントランスポーター(5HTTLPR)の遺伝子多型や、カテコールアミン関連遺伝子であるカテコール-0-メチル基転換酵素(COMT)の遺伝子多型により被験者を群分けすると、活性に差がある脳部位があることも示唆されている。これらは、個人差を説明する上で非常に興味深い結果である。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] 過敏性腸症候群における脳腸相関に関する研究2007
Author(s)
金澤太茂, 小長谷敏浩, 今村祐志, 金山範明, 松永昌宏, 大平英樹, 福山誠介, 篠田淳, 野村理朗, 野木森剛, 金子宏, 各務伸一
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Journal Title
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