2007 Fiscal Year Annual Research Report
情動発現の神経基盤及びその制御機構の解明-前頭眼窩野とドーパミンに着目して-
Project/Area Number |
05J07478
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松永 昌宏 Nagoya University, 環境学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ポジティブ感情 / PET / NK細胞活性 / ドーパミン / セロトニン / 遺伝子多型 |
Research Abstract |
「病は気から」という言葉に現れるように,人間の感情と身体とは密接に関連している。最近の研究では,ポジティブ感情を普段から多く喚起している人たちは風邪をひきにくく健康であるという報告があり,ポジティブ感情に伴う脳-免疫関連が示唆されている。しかしながら,こうしたポジティブ感情発現の脳内神経基盤及び中枢神経系,自律神経系,内分泌系,免疫系の関連の神経基盤については不明な点が多い。そこで本研究では,Positron Emission Tomography(PET)を用いて,ポジティブ感情発現の脳内神経基盤と脳-身体関連の神経基盤を探求することを試みた。さらに,遺伝子多型による群分けという手法を用いることにより,ポジティブ感情発現の神経基盤を神経伝達物質レベルで解明することも試みた。 まず,好きな人を見た時に喚起するポジティブ感情は脳内報酬系の活性化により生じるものであり,この脳領域の活性化に伴い末梢NK細胞活性を上昇させること,こうした脳-免疫関連はドーパミン神経系を介した反応であることが示唆された。さらに,ラブストーリー映画を見た時に喚起するリラックスするようなポジティブ感情喚起時には,副交感神経系の活性化を島皮質が認識し,ポジティブ気分が知覚されていることが示された。 神経末端から放出されたセロトニンを回収する働きがあるセロトニントランスポーター遺伝子のプロモーター部位には多型があることが知られており,繰り返し配列の長さによってLong(L)型とShort(S)型に分類される。L型とS型の人では脳内神経のセロトニン分泌に差があることが示唆されるため,ポジティブ感情喚起におけるセロトニンの役割を解明する上で非常に興味深い手法となり得る。実験の結果,S型の人々は前頭眼窩野の活性が高く,ポジティブ気分が上昇しやすいことが分かった。したがって,好きな入を見た時に生じるポジティブ感情には前頭眼窩野におけるセロトニンの分泌が関係していることが示唆された。
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Research Products
(5 results)