2006 Fiscal Year Annual Research Report
マントルウェッジ内におけるカンラン石格子定向配列の空間分布
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05J07511
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
水上 知行 名古屋大学, 環境学研究科(理学部), 特別研究員(PD)
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Keywords | 地殻-マントル構造 / ラマン分光法 / 岩石形成深度 / 地質圧力計 / 流体包有物 / マントル流動 / 標準試料 / 二酸化炭素 |
Research Abstract |
本年度は、ラマン分光法を地球科学に応用するための研究を中心に活動してきた。 クリソタイルのO-Hバンドの圧力依存性に関する詳細な実験データをもとに、鉱物内部の結合の挙動に関するモデルと新たな圧力計を提案した。この内容を記した論文は、American Mineralogistに受理された。 ザクロ石中の石英包有物の残留ひずみをラマン分光により検知し、到達深度の違う変成ユニットの境界を見極める研究を行なった。この内容は日本地質学会第113年学術大会にて発表した。 マントル内のカンラン石格子定向配列の分布を知るためには、起源の圧力を知る必要がある。そのためには、CO_2の残留密度を利用した圧力計の確立が重要であった。問題点は、(1)ラマン分析による密度推定に実験室間の違いがあること、(2)CO_2包有物がマントルから上昇してくる間のホスト鉱物の変形による密度低下が想定されるが、その程度を見積もる方法が無いこと、であった。(1)の問題について、東京大学の鍵裕之准教授、京都大学の山本順司博士らと共にCO_2密度標準プロジェクトを立ち上げ、複数の実験室間で差を補正するための研究を始めた。現在、名古屋大学と東京大学の違いは補正できるようになった。基礎実験により補正値の密度依存性の可能性が見えてきたため、追加実験を行っている段階にある。この研究成果は、私が代表となって論文にまとめる予定である。(2)の問題について、新宮のマントル捕獲岩からCO_2密度のサイズ依存性を見出し、様々な理論的検討を行なった結果、塑性変形が原因である可能性が見えた。さらにこのサイズ依存性を利用して密度低下を補正する方法を考案し、地質学的温度計と組み合わせて圧力推定を行なった結果、実用的な圧力計として真実の起源に非常に近い圧力を推定できることを示した。この内容は変成岩などシンポジウム2007で発表した。今後論文としてまとめて投稿する予定である。
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