2006 Fiscal Year Annual Research Report
細胞内シグナル分子EGFR, Ras活性化の1分子可視化解析
Project/Area Number |
05J07533
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村越 秀治 京都大学, 再生医科学研究所, 学振特別研究員PD
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Keywords | Ras / FRET / 1分子 |
Research Abstract |
これまでの研究により、私は生細胞中で、低分子量Gタンパク質Rasが活性化するのを1分子可視化することに成功した。実際には、YFP-Rasを発現した細胞に蛍光標識BodipyTRを結合させたGTPを顕微注入し、その細胞をEGFで活性化する。このとき、YFP-RasにBodipyTR-GTPが結合する瞬間を、1分子FRET法で検出した。 この結果、活性化される前のRasはリン脂質と同じような速い拡散運動をしているが、活性化したRasはシグナル複合体を形成し、膜骨格フェンスに囲い込まれる効果が大きくなって拡散運動が劇的に、しかし、一時的に減少することが見出された。すなわち、Rasの活性化にともなってシグナル分子複合体が形成されるが、.1秒程度の寿命で分解してしまうことが分かった。 このように、シグナル伝達はパルス状に生起し、短寿命のシグナル分子複合体がこれを担うことが示唆された。各素過程がデジタル的に生起する方が(数分間の活性化という風にアナログ的に起こるよりも)、その細胞での分子全体の挙動の制御が容易であること、いつも分子はOFFにしておいて、一瞬だけONにする方が誤作動しても危険が少ないこと(Rasはがん遺伝子産物)などの点で有利であることが考えられる。また、パルス状のシグナルは、細胞が環境の変化に次々と素早く対応するために、その間の運動停止は、局所的、あるいは極性をもつシグナルの誘起にとって重要かもしれない。
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