2006 Fiscal Year Annual Research Report
社会的ルールの知織構造が逸脱行為に及ぼす影響プロセスの検討
Project/Area Number |
05J07586
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
吉澤 寛之 名古屋大学, 大学院教育発達科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 社会心理学 / 犯罪心理学 / 社会的情報処理 / 反社会的行動 / 社会的ルール / 知識構造 / 社会適応性 / 心理教育プログラム |
Research Abstract |
本研究は、反社会的行動の予測における有効性が見出されている社会的情報処理アプローチの理論的枠組みを参考に、青少年における社会を捉える認識の問題を修正し、社会適応的な方向へと改善する方法を多面的に検討することを目的とする。本年度は、1.社会的情報処理に関する指標の発達的差異を検討することにより、適応的な方向での情報処理の様態を確認し、2.社会環境や社会システムが情報処理に与える遠隔的影響を検討するための調査を実施した。 1.では、社会的ルールの知識構造と認知的歪曲を社会的情報処理の指標として捉え、各指標の発達的差異を中学生と高校生との比較により検討した。その結果、社会的ルールの知識構造における構造的側面の指標を中心として、中学生よりも高校生が高い値を示すという発達的差異が確認された。また、性差も存在しており、男子と比較し、女子の知識構造指標は高く、認知的歪曲指標は低い値を示すことが確認された。以上の結果から、向社会的行動との関連を検討した昨年度の研究と整合的に、構造的側面を中心とした知識の構造が適応性を促進する一方で、認知的歪曲は適応性を抑制することが明らかになった。 2.では、対人的相互作用の希薄化や社会的規範の不明確化などに代表される社会環境や社会システムからの遠隔的な要因が、社会的情報処理に及ぼす影響を検討するため、具体的な調査の計画を立案した。これら社会環境や社会システムからの影響を直接的に比較するためには、比較文化的な研究が有効であると考えられるが、その前段階として国内の多様な地域で調査を実施することとした。調査では具体的に、集合的有能感と共同体資源(Sampson et al.,1997)から成る共同件の特徴が、反社会的行動の生起に及ぼす影響過程において、情報処理の個人差要因を媒介した過程と、反社会的行動を誘発する状況的要因(ルーチン・アクティビティ:Osgood et al.,1996)を媒介した過程の2つのルートを想定した因果モデルを検証する。 さらに本年度は、文献精読と、社会文化的要因が社会的情報処理に及ぼす影響を検討するための次の段階である比較文化調査の準備として、共同研究者との打ち合わせを行った。上記の研究は、本年度開催の国際会誌や国内学会で発表され、2本の論文を学術雑誌に投稿・審査中である。
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Research Products
(1 results)