2005 Fiscal Year Annual Research Report
表面ナノ構造とナノ分子膜の相互作用を利用した機能性潤滑表面の創成に関する研究
Project/Area Number |
05J07643
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
伊藤 伸太郎 名古屋大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員-DC2
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Keywords | レオロジー / トライボロジー / 磁気記録装置 / せん断力測定 / ヘッドディスクインタフェース / フッ素系潤滑剤 / 粘弾性 / 光ファイバープローブ |
Research Abstract |
磁気記録装置のヘッド・ディスク・インタフェースに代表されるように,nmスケールまで微小化する機械要素間の安定的な相対運動を実現するには,nm厚さの潤滑膜による潤滑機能の達成が必須となる.これまでの研究においては,nmオーダの隙間に閉じ込められた潤滑剤の粘弾性特性を評価するために,ファイバーウォブリング法とよばれる超高感度せん断力測定法を開発してきた.本年度は本手法を用い,無極性および極性のフッ素系潤滑剤について粘弾性特性の隙間依存性を測定した.極性および無極性潤滑剤は,ともに直鎖状の高分子であり主鎖の分子構造は同一であるが,極性潤滑剤のみ末端に極性の高い水酸基を有する.水酸基の効果により,極性潤滑剤は基板に化学的に結合した単分子膜厚の吸着層を形成することが知られている.一方,無極性潤滑剤ではこのような吸着層は形成しない.測定の結果,どちらの潤滑剤においても数百nm以下の隙間において粘性係数は隙間の狭小化に伴い増加し,最大でバルク状態での20倍から30倍に達することを明らかにした.また,数nmの隙間においてバルク状態では測定されない弾性を発現することを明らかにした.化学的吸着層を形成する極性潤滑剤と形成しない無極性潤滑剤の測定結果を比較することにより,二分子膜厚以下の隙間において無極性潤滑剤では粘性係数が上昇し続けるのに対して,極性潤滑剤では粘性係数の上昇が停止することを明らかにした.これは,流動性をもたない化学的吸着層の影響によると考えられる.また,マイクロメートルスケールからナノメートルスケールまで隙間を狭小化する過程と,逆に隙間を拡大化する過程において測定した粘弾性特性とを比較し,それらがほぼ一致することを見出した.このことから,上に述べたようなナノ閉じ込め状態に特異的な粘弾性特性は,隙間変化に対して可逆的であることを明らかにした.
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Research Products
(5 results)