2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J07772
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
村松 加奈子 名古屋大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 浄土真宗 / 聖徳太子絵伝 / 聖徳太子信仰 / 絵解き / 説話絵画 |
Research Abstract |
平成17年度は、四種絵伝をめぐる研究の第一段階として、中世成立の聖徳太子絵伝の分析を主たる課題とした。本年度報告者が特に注目したのは、愛知県岡崎市の浄土真宗寺院・勝鬘皇寺に伝来する聖徳太子絵伝全四幅(室町中期ごろ)である。本作はこれまでも博物館の展覧会等に出品されてきたが、未だ具体的な研究は行なわれておらず、簡略な図録解説等が主な先行研究となっている。 本作の抱える問題は、(1)全四幅のうち第四幅のみ場面配列が年次的でないこと(2)第四幅のみ絵画様式が大きく異なっていることの二点である。そのため第四幅のみ独立した環境で制作されたという説が提示されてきたが、詳細な分析は行なわれず、未解決のまま現在に至っている。 これに対し報告者は、本作の構成が浄土真宗に多く伝来する太子絵伝の"絵解き台本"の構造と合致していることに着目し、本作が当初から第四幅を含めた四幅構成で成立した可能性を想定した。この展望のもと、同寺および寄託機館の岡崎市美術博物館の協力を得て、平成17年10月、本作の細部撮影調査をおこなった。 得られた細部の図像データ比較によって、これまで問題とされた絵画様式の差異は、実は各幅に存在するものであり、第四幅に特化される現象ではないことが明らかになった。また第四幅に収録される説話の半数が"絵解き台本"で「別伝」として扱われていることと併せ、本作との構造上の類似を指摘した。 本作以外にも、年次的配列構成から逸脱した太子絵伝は真宗内に存在しており、この概念が宗派内で広く流通していたことが想像される。実態不明な点の多い絵伝制作過程の一端を示すものとして、さらに発展的な研究へと展開すると期待している。 最後に本年度予定していた鶴林寺本聖徳太子絵伝全八幅の調査は、作品が現在修復中であるため実現が叶わず、研究計画の大幅な変更を余儀なくされたことを記しておく。
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Research Products
(2 results)