2007 Fiscal Year Annual Research Report
有機ヘテロ接合界面における有機分子の配向性及び電子準位接続に関する研究
Project/Area Number |
05J07823
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
河辺 英司 Nagoya University, 理学研究科, 特別研究員(CD1)
|
Keywords | 有機半導体 / 金属界面 / 電子準位接続 / 界面電気二重層 / 紫外光電子分光 |
Research Abstract |
今年度は、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)と各種金属(金,銀,銅)界面の界面電子構造(真空準位シフトや界面準位形成)を紫外光電子分光により調べたところ、金属d電子帯とPTCDAの電子準位(最高占有準位(HOMO)・最低非占有準位(LUMO))の相互作用が、界面電子構造を決める上で非常に重要であることが分かった。つまり、(1)引力的な相互作用(金属d電子帯とPTCDAのLUMO間の相互作用)と、(2)斥力的な相互作用(軌道の直交化エネルギー)のバランスによって界面電子構造が決定されることが分かった。PTCDA/金界面では、斥力的な相互作用が強く、引力的な相互作用は弱いため、吸着エネルギーの小さい物理吸着系であり、この界面における真空準位シフトは金属表面に染み出た電子雲が、有機分子吸着により押し戻される「押し戻し効果」によるものと考えられる。一方、PTCDA/銀,銅界面では、斥力的な相互作用は弱いが、引力的な相互作用が強いため、吸着エネルギーが大きい化学吸着系となる。UPSスペクトルには金属とPTCDAの電子軌道が混成した界面特有の電子構造(界面準位)が観測された。それにより「界面準位への電荷の再分配」が起こり、真空側が負に帯電する分極が生じ、電気二重層が形成されたことが、PTCDA/銀,銅界面における真空準位シフトの主要因であると考えられる。以上のように、金属d電子が関連している、引力的・斥力的な相互作用を見積もることで、観測された界面電子構造を説明できることが分かった。本研究によって、これまで詳細が不明であった有機/金属界面電子構造の重要な決定要因である、有機分子と金属表面電子との相互作用を明らかにすることができた。これらは、昨今の有機電子デバイスの研究・開発においても重要な知見となる。
|
Research Products
(3 results)