2005 Fiscal Year Annual Research Report
線虫の温度と餌との連合学習において機能するcGMPシグナル伝達系の逆遺伝学的解析
Project/Area Number |
05J07840
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
西尾 奈々 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 記憶・学習 / cGMPシグナル伝達系 / 遺伝学 |
Research Abstract |
cGMPシグナル伝達系は、記憶・学習において重要な役割を果たすことが示唆されてきたが、遺伝子・神経回路・行動の3つの階層の統合的な解析は行なわれていなかった。本研究では、神経機能解析に適したモデル動物である線虫C.elegansをもちいて、記憶・学習におけるcGMPシグナル伝達系の役割を解析している。 まず、cGMPシグナル伝達系に異常を持つegl-4変異体とpde-5変異体における、温度と餌条件との連合学習の異常について、解析を行なった。egl-4遺伝子はcGMP依存性プロテインキナーゼ(PKG)をコードし、pde-5遺伝子は環状ヌクレオチドの分解に関与するホスホジエステラーゼ10(PDE10)をコードする。egl-4変異体は、高温(25℃)においてのみ、飢餓を体験した温度に対する忌避行動に異常を示し、低温(17℃)においての忌避行動は正常であった。pde-5変異体は、高温あるいは低温のいずれにおいても、餌餓体験温度忌避行動に弱い異常を示した。興味深いことに、この異常は、孵化後継続して同じ温度で飼育した場合よりも、第4幼虫期の前と後とで飼育温度を変化させて飼育した場合のほうがより顕著に表れた。また、pde-5以外のすべてのpde遺伝子についても欠失変異体を作製し、そのうちの一部について飢餓体験温度忌避行動を解析したが、顕著な異常は観察されなかった。 また、本研究者が所属する研究室で単離された変異体の中には、egl-4変異体と同様に、高温においてのみ飢餓体験温度忌避行動に異常を示すaho-3変異体が存在した。aho-3遺伝子は、加水分解酵素ドメインを持つ新規のタンパク質をコードすることが予測され、現在、EGL-4/PKGと新規タンパク質AHO-3との関係を調べるために、aho-3変異体についても、遺伝学的、行動学的な解析を行なっている。
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