2006 Fiscal Year Annual Research Report
気象変化による慢性痛増強に関わる生体内気圧受容器の解析-内耳器官の重要性-
Project/Area Number |
05J07855
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
舟久保 恵美 名古屋大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 気圧 / 前庭神経核 / ラット / 単一神経放電記録 / 気象変化 / 天気痛 |
Research Abstract |
低気圧接近などの気象変化により、ヒトの慢性痛が増強する現象が知られている。我々はこれまでに、慢性疼痛モデルラットを日常の気象変化で起こりうる程度の人工的気圧低下環境に曝露し、その痛み行動が増強することを明らかにした。また、鼓膜を外科的に破壊、またはヒ素注入により内耳を破壊した慢性痛モデルラットに対して気圧低下環境の影響を観察したところ、鼓膜破壊では気圧低下の慢性痛増強効果は消失しないが、内耳破壊が慢性痛増強を抑制する結果を得た。これは内耳に何らかの気圧検出機構が存在することを示唆している。そこで、内耳の気圧検出機構を明らかにするため、健常ラット前庭神経核の単一神経放電記録を行い、気圧低下に対する応答を調べた。 麻酔下でガラス微少電極をラットの前庭神経核に刺入し、前庭神経を電気刺激しながら前庭入力をもつニューロンを探した。その後8分間で大気圧から40hPa気圧を低下させ、設定気圧到達後8分間低圧を維持し、そしてまた8分間で大気圧に戻し、その間の反応を観察した。また、このニューロンが気圧以外の刺激に応答するかどうか調べるため、回転刺激、カロリックテストを行った。実験終了後、脳組織標本を作成し電極位置を確認した。 気圧低下に曝露することができた17個の前庭神経核ニューロンのうち、5つで放電頻度の増加が観察できた。気圧低下に対する反応は以下の3つのパターンに分類できた。気圧低下により、1)放電頻度が増加し、復圧により減少する(3例),2)放電頻度が増加し、そのまま持続する(1例),3)ゆっくりした変動のあった放電頻度が一定になる(1例) 5例中4例は回転刺激やカロリックテストにも応答したが、1例は気圧以外の刺激には応答しなかった。この結果より、気圧にのみ反応するニューロンの存在が示唆される。今後さらに多くのニューロンの記録を行い、反応閾値の有無、反応パターンの分類を進める。
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Research Products
(1 results)