2006 Fiscal Year Annual Research Report
エピジェネティック変異イネEpi-d1を用いた遺伝子発現制御機構の解明
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05J07860
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
三浦 孝太郎 名古屋大学, 大学院生命農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | エピジェネティック変異 / 遺伝子発現制御 |
Research Abstract |
課題担当者は、1個体内に矮性と正常の表現型がキメラ状に混在するイネ突然変異体Epi-d1を見いだし、この現象の解明に取り組んでいる。前年度までに、Epi-d1変異体の原因遺伝子の候補領域を第5染色体上の33.5kbに特定し、その領域内に8.6kbが同一方向に3回連続するリピート配列とD1(三量体Gタンパクαサブユニット)が座乗することを解明し、さらにこのD1遺伝子の発現が不安定に変化するエピジェネティック変異体であることを突き止めた。そこで今年度はこのD1遺伝子の不安定な発現を制御する因子の解明を目指して研究を行った。 最近、エピジェネティックな発現制御に関わる因子として、DNAのメチル化修飾、ヒストン修飾が報告されているためEpi-d1変異体におけるDNAメチル化及びヒストン修飾解析を行なった。DNAメチル化解析としてメチル化感受性酵素を用いてD1遺伝子座のサザンプロット解析を行なったところ、野生型イネとEpi-d1の正常部位では脱メチル化状態であるのに対し、矮性部位では高メチル化が検出された。この結果は、D1遺伝子の発現が抑制されている矮性部位ではD1遺伝子座のDNAが高メチル化していることを示し、Epi-d1変異体はD1遺伝子座のDNAメチル化状態が不安定に変化していることが明らかになった。 さらにDNAメチル化と共に遺伝子発現制御の重要な因子であるヒストン修飾についてクロマチン免疫沈降法を用いて解析した。遺伝子発現抑制状態の指標であるヒストンH3K9のメチル化抗体と、遺伝子発現状態の指標であるヒストンH3K9のアセチル化抗体を用いてD1遺伝子座のヒストン修飾を調べた結果、野生型イネとEpi-d1の正常型部位ではアセチル化されているのに対し、矮性部位ではメチル化されていることが明らかになった。この結果は、DNAのメチル化同様、矮性部位ではヒストンの修飾状態が遺伝子発現抑制型(ヘテロクロマチン)に変化していることを示し、Epi-d1はD1遺伝子座のクロマチン状態が不安定に変化していることも明らかになった。
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