2005 Fiscal Year Annual Research Report
エピジェネティック変異イネEpi-d1を用いた遺伝子発現制御機構の解明
Project/Area Number |
05J07860
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
三浦 孝太郎 名古屋大学, 生命農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | エピジェネティクス / 変異体解析 |
Research Abstract |
課題担当者は、1個体内に矮性と正常の表現型がキメラ状に混在するイネ突然変異体Epi-d1を見いだした。この変異体の遺伝様式を詳細に調査した結果、矮性型から正常型、正常型から矮性型への両方向の変化が高頻度に起こるこれまで例のないエピジェネティック変異であることが明らかとなった。また、Epi-d1における表現型の不安定な変化は穂でもおこり、正常な形の種子と短く丸い種子とが混在したキメラ状の穂を形成する。このことはEpi-d1における表現型の変化が栄養生長期・生殖生長期の区別なく常に起こり続けていることを推測させる。本年度は、この不安定な表現型の変化をもたらす原因遺伝子の単離を目指して研究を行った。 日本型イネであるEpi-d1にインド型亜種のカサラスを交配し、得られたF_1を自殖したF_2雑種集団10000個体を用いてポジショナルクローニングを行なった。その結果、第5染色体55cM付近33.5kb内に原因遺伝子が存在していることが明らかになった。この33.5kbの候補領域内には8.6kbの配列が3回同一方向に繰り返しているリピート配列と、D1(三量体Gタンパク質αサブユニットをコードしている)が存在した。そこでEpi-d1におけるD1遺伝子の発現解析を行なったところ、正常型ではD1が発現しているのに対し、矮性型ではその発現は抑制されていた。つまりEpi-d1において矮性型と正常型の変化を規定しているのはD1遺伝子であることが明らかになった。しかし、D1遺伝子内には塩基配列の変異はなく、何がこのD1遺伝子の不安定な発現を制御しているのかは未だ不明である。 近年、エピジェネテックな遺伝子制御において、リピート配列の存在が転写制御に影響を及ぼすという研究が多数報告されており、Epi-d1において原因遺伝子の候補領域内に存在するリピート配列がD1遺伝子の発現に対して何らかの影響を与えている可能性を見いだした。今後このリピート配列の関与を詳細に解析する予定である。
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