2006 Fiscal Year Annual Research Report
問題や否定的な思考から距離をおくスキルの適応的機能に関する認知臨床心理学的研究
Project/Area Number |
05J07939
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
杉浦 知子 信州大学, 人文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 認知行動療法 / 心理測定 / マインドフルネス / 強迫症状 / メタ認知 / 心理的介入 / ストレス対処 / 多変量解析 |
Research Abstract |
本研究は,近年の認知行動療法で注目される,問題や否定的な思考から距離をおくスキルの作用機序を解明することを目的とする.平成18年度は,アセスメント開発と介入研究とのインターフェースとして,距離をおくスキルと精神症状やその素因との関連の検討を行った. 1.距離をおくスキルと強迫症状の素因との関連 強迫症状の素因の一つとされる不決断傾向を測定する尺度の妥当性を検討し,距離をおくスキルとの関連を検討した.その結果,(1)不決断傾向は強迫症状と関連すること,(2)否定的な思考から距離をおくスキルが,不決断傾向を低減すること,が分かった(信州大学人文科学論集<人間情報学科編>で印刷中.なお執筆資格の関係で第2著者であるが,研究の中心は報告者による).また,このような研究の前提として強迫症状の認知モデルに関する検討を行った. 2.距離をおくスキルと不適応なメタ認知の関連 近年,多くの心理的問題には,不適切なメタ認知的信念が関係していることが分かっている.それらの要因と距離をおくスキルがどのように関連するのかを検討するために,多面的な分析を行った.因子分析の結果,(1)自分の認知に対する否定的な評価(距離をおくスキルはこちらにマイナスの負荷)と(2)認知をコントロールする過剰な努力という2因子が得られた.また,距離をおくスキルは不適切なメタ認知的信念によって説明できない心配性傾向の分散を説明していた. 3.理論的研究 認知行動療法における距離をおけるスキルについての研究書を刊行した(風間書房).また,距離をおく介入についての理論的研究に着手した.これは来年度も継続し,その成果は「メタ認知:学習力を支える高次認知機能(北大路書房)」に収録予定である.また,日本心理学会のワークショップでも発表予定である.
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Research Products
(4 results)