2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J07964
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
宇津野 宏樹 信州大学, 理学部, 特別研究員-DC1
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Keywords | 左右性 / 発生拘束 / 進化 / 軟体動物 |
Research Abstract |
動物の内臓は普遍的に左右非対称だが,その左右が反転した種(鏡像種)は一般に例を見ない。例外的に巻貝では鏡像種が繰り返し進化したが,その数は実像種に比べ圧倒的に少ない。なぜ,鏡像体は進化しにくいのか。これまでの説明は巻貝の一部にしか適用できなかった。本研究の目的は,すべての動物に適用可能な発生拘束仮説を検証することである。発生拘束とは、それぞれの生物で使われている有限な数の発生プロセスがもたらすパターンの偏りである。本年度は以下の二点を明らかにした。 1)発生拘束が鏡像体の進化を抑制している モノアラガイで,実像体と突然変異で生じた鏡像体を比べると,同じゲノムを持っていたとしても,鏡像体であきらかな発生の異常が見られた。これは,正常な鏡像体を作るための発生プロセスを持たないこと(発生拘束)が鏡像体の進化を抑制している証明である。 2)発生拘束が生じる原因 しかし,モノアラガイで扱った実像体と鏡像体は,左右極性と母親由来の左右決定因子が同時に異なるため,どちらが異常をもたらすのかはわからなかった。オナジマイマイで見つかった特異な変異個体は,これまでのいかなる例とも異なり,実像体と鏡像体の兄弟を同時に産む。この母性因子を共有した実像体と鏡像体の比較を行なった結果,鏡像体の発生は異常であった。つまり,左右が反転することそれ自体が異常を引き起こす。この結果は,鏡像体への変化はどんな突然変異によって生じても必ず異常をともなうため,発生拘束の進化的変化への影響が大きいことを示唆する。 来年度は,鏡像体が進化した原因に焦点を置き,鏡像種で生じた実像体を用いて実験を行なう予定である。
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