2006 Fiscal Year Annual Research Report
東南アジアにおける植物-アリ-カイガラムシ-チョウ四者共進化系の分子系統解析
Project/Area Number |
05J07966
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
上田 昇平 信州大学, 総合工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 東南アジア熱帯雨林 / 多様性 / 共進化 / 分子系統解析 / アリ植物 |
Research Abstract |
背景 東南アジア熱帯雨林に生育するマカランガ属29種はアリ植物と呼ばれ,幹の空洞内には共生者であるアリとカイガラムシが居住している.アリは住居と餌(栄養体:植物由来・甘露:カイガラムシ由来)の見返りとして,植食者やからみついてくるツル性植物から植物を防衛する.このアリとカイガラムシは植物に完全に特殊化しており,植物から離れて生きていけない. 研究目的 本研究では,絶対共生関係にある植物(マカランガ)と昆虫(カイガラムシ,アリ),3者間の共進化の歴史を,分子系統解析によって明らかにする.これにより,熱帯の生物多様性を生み出す原動力と考えられている種特異性の維持機構を解明することが本研究の目的である. 研究経過 東南アジアのボルネオ島,スマトラ島およびマレー半島において16種のオオバギ属約300株からカイガラムシの網羅的な採集を行った.これらのサンプルを用いてカイガラムシの分子系統樹と寄主(マカランガ・アリ)系統樹を比較し,3者間共進化の歴史を明らかにした. 得られた結果 1.アリ-カイガラムシ間の分岐年代比較から,(1)カイガラムシは植物-アリ共生系に少し遅れて参加したこと,(2)それ以降に関しては,植物-アリ-カイガラムシの3者は地質的な長期間,共生関係を維持し,同時的多様化してきたことが明らかになった. 2.カイガラムシのmtDNA系統樹と,形態種および核DNA系統樹は一致せず,一部のカイガラムシ系統には浸透交雑が起こっていることが明らかになった. 3.植物-カイガラムシ間の系統樹比較から,植物-アリ系とは対照的に,カイガラムシの植物に対する特異性は長期間にわたって維持されることはなく,長期間の共進化の間に,複数回の寄主転換と特異化が起こっていた,
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