2005 Fiscal Year Annual Research Report
東南アジアにおける植物-アリ-カイガラムシ-チョウ四者共進化系の分子系統解析
Project/Area Number |
05J07966
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
上田 昇平 信州大学, 理学部, 特別研究員-DC1
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Keywords | 東南アジア熱帯雨林 / アリ植物 / 共進化 / マカランガ / カイガラムシ / 分子系統樹 / 浸透交雑 |
Research Abstract |
東南アジア熱帯雨林において,アリ植物マカランガ属(Macaranga)は幹の空洞内に特殊化したシリアゲアリ属(Crematogaster)とヒラタカタカイガラムシ属(Coccus)を居住させている.植物は栄養体と(カイガラムシの甘露をつうじて)師管液をアリに与え,その見返りとしてアリは植物を外敵から防衛している.この3者は絶対共生関係をむすんでおり,それぞれ特定の分類群のみがこの系に関与している. 東南アジア全域から採集されたカイガラムシ約100サンプルについて,ミトコンドリアDNA (mtDNA)のCOI遺伝子を用いて分子系統樹を作成したところ,共生カイガラムシは単系統となり,ボルネオ系統からマレー系統が分岐したという歴史を示した.このカイガラムシmtDNA系統樹とすでに報告されていたアリmtDNA系統樹(COI),植物nrDNA+形態系統樹を比較したところ,カイガラムシ種特異性は両寄主に対して低く,共種分化も検出されなかった.しかし,カイガラムシとアリの植物への共生の起源年代(約1000万年前),さらにはマレー系統が分岐した年代(約400万年前)がほぼ一致したことから,植物-アリ-カイガラムシの3者は,マカランガがアリ共生を獲得した時点(約2000万年前)以降から,同時期に種分化し,3者がともに多様化してきたことが示唆された. カイガラムシのmtDNA系統樹と形態種分類を比較すると,一部のmtDNA系統は形態種分類とは一致せず,地域ごとにまとまる傾向をしめした.このことから一部のカイガラムシには浸透交雑が起きている可能性が示唆された.mtDNA系統樹と同一サンプルを用いて作成した核DNA系統樹(WG+EF-1 alpha)は種ごとにまとまる傾向を見せ,mtDNA系統樹とは一致しなかった.これらのことから,一部のカイガラムシには浸透交雑が起きている可能性は高く,種の系統をよりよく繁栄しているのは核DNA系統樹と考えられる.
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Research Products
(2 results)