2007 Fiscal Year Annual Research Report
ジョン・ロック自由論を基盤とした責任論の構築:免責要件としての自由意志概念の探求
Project/Area Number |
05J07981
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
佐々木 拓 Keio University, 商学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 哲学 / 倫理学 / 自由 / 自由意志 / 責任 / 他行為可能性 / 免責 / 決定論 |
Research Abstract |
本研究は、自然科学の発達により因果的決定論擁護の潮流の高まる現代自由意志論争に対して、帰責の観点から新たな自由意志概念を提示することによって自由意志論を擁護し、それに基づいた責任論を構築することを目的としている。具体的な目的は次の3点である。1.「自由な行為」を成立させる必要条件としてではなく、単にその欠如の場合にのみ問題となり、行為の免責につながるような「自由意志」概念の探求、2.ロックの道徳論からの1の概念の導出、3.1の自由意志概念の倫理学的妥当性の提示。 以上を踏まえて、最終年度である本年度には、これまで行ってきたジョン・ロックの道徳哲学、自由意志論、応用倫理学、メタ倫理学の総合が目指された。まず、ジョン・ロック研究の集大成として京都大学博士学位論文「ジョン・ロックの道徳哲学の射程」が発表された。この論文では、ロックの力能論を媒介させ、責任論と自由意志論を接合させることで力能を基礎にした新たな自由概念を提示した。これは1および2の目的の達成を意味する。また、ロックの議論を現代の自由意志論から検証することにより、3の目的を部分的に達成した。 次いで、自由意志論のメタ倫理学的基礎づけがなされた。これまで「事実」に関する議論であった自由意志論を「規範」の議論と捉え直すことで、非認知主義的な自由意志論という新しい立場の可能性を示した。これは1に示した新たな自由意志概念の正当化という意味で3に資する。この成果は関西倫理学会2007年度大会で発表された。 最後に、応用倫理学について、現在注目を集めているニューロエシックスにおいて、自由意志論の観点からどのような議論が行われているかをサーベイした。この成果は『実践哲学研究』に掲載された。決定論の議論は脳科学の発達により一層影響力を強めることが予想される。本研究成果はこの議論についての将来的な準備にあたる。
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Research Products
(3 results)