2005 Fiscal Year Annual Research Report
比丘尼御所の文芸文化と室町期の説話・物語草子の研究
Project/Area Number |
05J07991
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
恋田 知子 慶應義塾大学, 附属斯道文庫, 特別研究員(PD)
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Keywords | 比丘尼御所(尼門跡) / 物語草子 / 説話 / 絵巻・奈良絵本 / 杉原盛安 / 源氏供養 / 西国巡礼縁起 / 冥界 |
Research Abstract |
室町期の比丘尼御所における文芸営為を研究の中心課題とし、並行的に同時代の文芸の生成・享受の様相を分析しながら、文芸と宗教との相関関系を明確化することを試みてきた。 まず、『国語国文』5月号掲載論文において、『観世音菩薩往生浄土本縁経』という偽経に端を発した「早離速離」説話の引用・享受を確認し、これまで具体的には分析されてこなかった岩瀬文庫蔵『釈迦并観音縁起』絵巻について検討し、江戸前期における縁起絵巻の実態、および制作状況、さらに制作発願者杉原盛安の意義などを提起した。さらに、『国語と国文学』8月号掲載論文では、「源氏供養」の史的展開について概観した上で、『源氏供養草子』が、狂言綺語の戯れが讃仏乗の因となるという方便を具現化した物語草子として、寺院文化圏と貴族文化圏の双方で成り立っていたものと結論づけ、唱導と物語草子との関わりの一端を明らかにした。また、11月に刊行された『寺社縁起の文化学』では、『お湯殿の上の日記』を通じて、当時の公家社会において宗論が絵草子化されて読み物となっていたことを、寺社縁起や僧伝などの宗教的言説が絵画・草子として受容されていく様相に照らして考察し、女房文化における物語草子の実態について体系化をはかり、その流通過程に、比丘尼御所が密接に関わっていたことを明らかにした。なお、以上の論文をふくめた、これまでの研究を学位論文としてまとめ、提出した。 また、9月に行われた巡礼記研究会研究集会では、室町期の文芸と宗教の関わりを考察する上で、極めて重要な、西国三十三所巡礼の起源をとく『西国巡礼縁起』について、伝本の調査・分類を行い、西国巡礼の淵源に冥界譚を配するという点に着目し、説話や物語草子の類に見える冥界遍歴とともに考え、その意義についても言及した。 一方、次年度以降の紹介・発表に向け、京都に現存する尼門跡寺院の所蔵文献の基礎的調査をおこない、比丘尼御所の文献調査・分析、所蔵文献目録等の修正・体系化の準備を進めた。
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Research Products
(3 results)