2006 Fiscal Year Annual Research Report
比丘尼御所の文芸文化と室町期の説話・物語草子の研究
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05J07991
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
恋田 知子 慶應義塾大学, 附属斯道文庫, 特別研究員(PD)
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Keywords | 比丘尼御所 / 道成寺 / 法華経直談 / 熊野 / 西国巡礼 / 絵巻 / 草子 / 説話 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き、室町期の比丘尼御所における文芸営為を研究の中心課題としながら、並行的に同時代の文芸の生成・享受の様相を分析し、文芸と宗教との相関関係を明確化することを試みてきた。 まず、説話・伝承学会2006年度大会において、「室町の道成寺説話-物語草子と法華経直談-」と題し、「女人化蛇」「女人の執心」「僧の妨げ」などさまざまなモチーフからなる<道成寺説話>を例に、説話の生成・享受圏や、絵巻や草子といったテキストの形態にあわせて、各モチーフが濃淡をもって表出され、形成されていく様相を検討し、輪王寺蔵『直談因縁集』の意義について考察した。また、国際熊野学会2006年度大会では、「『西国巡礼縁起』と熊野信仰」と題し、室町期の文芸と宗教の関わりを考察する上で、極めて重要な、西国三十三所巡礼の起源を説く『西国巡礼縁起』について、伝本の調査・分類を行い、熊野信仰とのかかわりから、その意義について言及した。以上、二つの口頭発表については、『説話・伝承学』15号(2007年3月刊行予定)、『巡礼記研究』第3集(2006年9月)の各号に、それぞれ論文としてまとめた。 さらに、昨年度提出した学位論文の出版を進めるにあたり、本研究の中心課題である「比丘尼御所の文芸文化」について、現時点における調査・研究の成果をまとめたものを加筆し、次年度の刊行に向け、校正を進めている段階である。また、本研究の遂行途上に見いだした資料をもとに、室町期の草子類を媒介とした、貴族文化圏と寺院文化圏の交流の様相を考察し、まとめたものも、次年度刊行される予定である。 今年度に引き続き、最終年度である次年度における紹介・発表に向け、京都に現存する尼門跡寺院の所蔵文献の基礎的調査などをおこない、比丘尼御所の文献調査・分析、所蔵文献目録等の修正・体系化を進める予定である。
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Research Products
(2 results)