2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J08019
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
武藤 秀太郎 慶應義塾大学, 経済学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | アジア / 佐田介石 / 吉野作造 / 福田徳三 / 河上肇 / 黎明会 |
Research Abstract |
今年度おこなった研究活動の1つに、日本経済思想史研究会第17回全国大会でおこなった報告「佐田介石の「消費」概念-『栽培経済論』を中心に」がある。その要旨はつぎの通りである。 報告では、「ランプ亡国論」など、明治初期における舶来品排斥運動の主唱者として知られる佐田介石の経済思想を、その主著『栽培経済論』(1878)を中心に検討した。 佐田は、数多くの建白や『栽培経済論』などの著作を通じ、「国を富すの道は、消費の法を広くするに如くはなし」と、「製造」よりも「消費」に主眼を置いた「富国」策の必要性を訴え、その具体案として、第1に「人民輻輳の地」を全国に開くことを主唱した。彼は、風紀素乱を助長する遊郭や劇場も、都市では人を呼び寄せ、「消費」を旺盛にすると容認し、経済格差についても、「富者」が起業や「消費」を通じてもたらす利益の方が、「貧者」の蒙る不利益を上回るとして是認した。こうした経済観を有した佐田が、外国交易を非とした大きな理由の1つは、西洋と日本の物品に対する「消費」規模の格差であった。本報告では、佐田がやみくもに舶来品排斥を唱えていたわけでなく、彼なりの経済的見地に立ち、合理主義的に持論を導ぎ出していたことを明らかにした。 これ以外の主な研究としては、慶應義塾福沢研究センター紀要『近代日本研究』に投稿した論文「前期河上肇における社会政策論とナショナリズム-もう1つの『貧乏物語』」と、国際日本文化研究センター共同研究会で発表した報告「戦間期における知識人集団-黎明会を中心に」が挙げられる。なお、この日本経済思想史研究会大会、および国際日本文化研究センター共同研究会でおこなった報告は、できるだけ早い時期に活字化する予定である。
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Research Products
(1 results)