2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J08019
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
武藤 秀太郎 Keio University, 経済学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 森有礼 / 商法講習所 / 脱亜 / 黎明会 / 大正デモクラシー / 吉野作造 / 福田徳三 / 民本主義 |
Research Abstract |
2007年10月21日に開かれた日本思想史学会大会で、「森有礼の商業教育論」と題した学会発表をおこなった。 本報告では、商法講習所設立を主導した森有礼の思想的背景を、彼の英語公用化論や商業にまつわる登言などをもとに検討した。ワシントンで小弁務使を務めていた森は、『日本における教育』の序文で、漢字を用いる日本と中国の両言語が、近代文明に伴う英語の普及で後退を余儀なくされているとし、将来における日本語使用の廃止と、英語の採用を提議した。他方、大阪商法会議所でおこなった講演での発言などをみると、森が競争相手として、欧米でなく中国の商人を想定していたことがうかがえる。本論文では、一見「脱亜」的と思える森の主張の背後に、中国に対する強い対抗意識があったことを明らかにした。 今年度活字化された業績としては、猪木武徳編『デモクラシーと中間団体-戦間期日本の社会グループとネットワーク』に収録された論文「戦間期日本における知識人集団-黎明会を中心に」が挙げられる。 本論文では、大正デモクラシー運動の旗振り役をつとめた知識人集団である黎明会に焦点をあて、当会が中間組織としてリベラル・デモクラシーに果たした役割をさぐるとともに、やがて機能不全に陥っていった経緯を考察した。この黎明会は、言論の自由をめぐり、民本主義の主唱者だった吉野作造が浪人会と交わした立会演説会を機に、大学関係者を中心に結成された啓蒙団体であった。彼らは、国内の時事問題に関わるキャンペーンを展開するとともに、第1次世界大戦後の国際情勢、対外問題について積極的に発言をおこなったが、その活動期間は短命であった。本論文では、この点に留意しつつ、中間組織としての黎明会がとり結んでいったグループ外部とのネットワークの一端を明らかにした。
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Research Products
(2 results)