2005 Fiscal Year Annual Research Report
シリコン量子コンピュータの実現に向けたスピンダイナミクスに関する研究
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05J08094
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
阿部 英介 慶應義塾大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 半導体同位体工学 / 電子スピン共鳴 / 量子コンピュータ / コヒーレンス時間 |
Research Abstract |
半導体シリコン中のリン不純物に束縛された電子スピンのコヒーレンス時間の測定を,パルス電子スピン共鳴法によって実施した.リン電子スピンにおいては,母体シリコンの持つ^<29>Si核スピンが主なデコヒーレンス要因となるため,その濃度を変化させた一連の試料を作製することにより系統的な測定を行った.用いた試料の^<29>Si同位体濃度は0.075%,0.2%,0.3%,1%,5%,10%,50%,100%であった.その結果,同位体濃度5%以上の試料ではコヒーレンス時間は同位体濃度のべき乗に比例し,その指数はおよそ-0.87であることを見出した.この実験結果は,Maryland大学のWitzelらによって提案された理論計算[Phys.Rev.B 72 161306(2005)]の結果とよい一致を示している.同位体濃度1%以下の試料については,母体核スピン以外に起因すると考えられる振る舞いを確認したが,その起源の正確な同定には至っていない. 上記試料に対しては連続波電子スピン共鳴法による,吸収線形と線幅の測定も行った.その結果,線幅は母体核スピンが電子スピンの及ぼす有効磁場に起因する不均一広がりによるもので,理論によって予測される同位体濃度の平方根に比例した依存性を確認した.線形もランダムな母体核スピン有効磁場を仮定したシミュレーション結果からよく説明できる. 電子スピンのコヒーレンス時間が1msを超える,同位体濃度1%以下の試料では,電子スピンとリンの持つ核スピンの間での量子状態の操作が期待できる.その第一段階としてパルス電子核二重共鳴法によって,リン核スピンのラビ振動を電子スピン遷移を介して観測することに成功した.
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Research Products
(1 results)