2005 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ多孔質ガラスに閉じこめたヘリウム4の超流動・固体液体転移
Project/Area Number |
05J08138
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
山本 恵一 慶應義塾大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ナノ多孔質ガラス / 超流動 / 量子相転移 / 量子固体・液体 |
Research Abstract |
本研究の目的は、ナノ構造中にヘリウム4を閉じ込めたときに現れる新しい量子液体相を探索することにある。既に平成16年度までの本研究において、孔直径25Åの虫食い状の細孔を持つナノ多孔質ガラス中の加圧下ヘリウム4における超流動転移温度は加圧と共に大きく抑制され、約3.4MPaで絶対零度に到達することを明らかにした。これは圧力による量子相転移が起きていることを示唆している。また、定積圧力測定による多孔質ガラス中ヘリウムの固体相の探索により得られた固体液体共存線は、バルクのものと比較して低温度、高圧力側にシフトした。前述した超流動転移温度の圧力依存性と共に考えると、超流動相と固体相の間に、超流動ではない相が存在することが明らかとなった。この相のエントロピーは、定積圧力の測定から得られた固液共存線が低温で温度にほぼ依存しないことから、固体相のものと同様に非常に小さいということを示唆している。この相の解釈として、多孔質ガラスの細孔径の不均一性に起因する局在したボース凝縮状態が生じていると考えている。定積圧力の測定結果は本年度に開催された国際低温物理学会議(LT24)で報告した。 本年度は、前年度に使用した極低温圧力計による定積圧力測定では低温での温度に依存しない固液共存線の測定が不可能であったため、温度一定でサンプルスペースを加圧出来るセルを作成し低温での共存線の測定を試みたが、実験セルの制約上加圧可能範囲が非常に狭く、従って共存線を決定するには至らなかった。さらに多孔質ガラス中における加圧下ヘリウム4の熱容量を交流法により50mKまで測定したが、詳細を明らかにするには至っていない。 次年度は、断熱法による多孔質ガラス中ヘリウム4の熱容量測定を行う予定である。
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Research Products
(2 results)