2007 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ多孔質ガラスに閉じこめたヘリウム4の超流動・固体液体転移
Project/Area Number |
05J08138
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
山本 恵一 Keio University, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ナノ多孔質ガラス / 超流動 / 量子液体・固体 / 量子相転移 |
Research Abstract |
本研究の目的は、ナノ構造中にヘリウム4を閉じ込めたときに現れる新しい量子液体相を探索することにある。すでに平成18年度までの本研究において、孔直径2.5nmのランダムな孔構造を有するナノ多孔質ガラスの中のヘリウム4の超流動転移温度は加圧と共に大きく抑制され、約3.4MPaで絶対零度に到達することを明らかにした。これは、圧力をパラメータとした量子相転移が起きていることを示唆している。定積圧力の測定から得られた固化曲線は、1.4K以下の低温でほぼ温度に依存しないことより、超流動相と固体相の間に超流動を示さない液体相(非超流動相)が存在することを明らかにした。 本年度は、非超流動相の熱力学的状態を明らかにするため、断熱法による熱容量測定を行った。その結果、超流動転移温度よりも高温度において熱容量のピークを観測した。この事実は長距離秩序である超流動が起こるよりも高温で短距離的な秩序状態が発達していることを示している。この短距離秩序状態は局在したボース凝縮状態であると考えており、細孔中^4Heの一部がボース凝縮を起こすが、全体としては凝縮体の位相がコヒーレンスでないために超流動を示さない状態である。この状態は^4He原子間の強い相関と多孔体の形成する孔径程度のスケールのランダムポテンシャルによって引き起こされる。極大を示す温度T_B以下では、熱容量の温度依存性はボース凝縮体に特有の励起であるフォノン、ロトンによる寄与により説明できる。これは、超流動転移温度以上の温度でも多孔体の中でボース凝縮体が局在して存在することを明瞭に示している。以上の研究成果はナノ空間中のボース凝縮体の局在状態の存在を提示し、物性物理学にインパクトを与えるものであると考えている。
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Research Products
(8 results)