2006 Fiscal Year Annual Research Report
高分解X線スペクトルを用いた超新星残骸の研究とX線偏光計の開発
Project/Area Number |
05J08255
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
植野 優 東京工業大学, 大学院理工学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 超新星残骸 / X線観測 / 宇宙線加速 / X線偏光 / 気球実験 |
Research Abstract |
超新星残骸での粒子加速の定量評価を行うため、X線観測のデータ解析を行った。超新星残骸RCW86の南西部に知られていた中性のK殻鉄輝線(6.4keV)の位置を、すざく衛星の観測により初めて特定した。この鉄輝線は、輝線を除いた連続成分と異なる位置から発せられていた。つまり、連続成分は完全にべき乗のスペクトルを持っており、シンクロトロン放射と考えて矛盾しないことを示した。また、輝線がドップラー効果によって約3000km/s相当の幅に広がっていることを明らかにした。これはRCW86の南西部のシェルはこの程度の速度を持っていることを示しており、シンクロトロンX線放射が発せられる条件を満たしていることになり、上記の結果と矛盾しない。さらに、観測データは、.鉄輝線の電離度は非常に低くプラズマの年齢が若いのに、電子の温度は高いことを示す。これは、電子と陽子の間に衝突以外の何らかの相互作用が起こっていることを示唆して重要である。他、TeVガンマ線の検出されている未同定天体をすざく衛星で観測した。X線強度が弱いことを明らかにし、TeVガンマ線は逆コンプトン効果では説明できないため、我々は加速された陽子がパイ粒子を経て放射するガンマ線である可能性を提案した。 また、超新星残骸での粒子加速の研究で重要となるX線偏光観測装置の開発を行った。具体的には、気球で観測を行う硬X線偏光検出器PoGOのプロトタイプを製作し、その性能評価を行った。完全な主検出部7ユニットとアクティブシールド、また読み出し回路という実際のフライトモデルの構成要素全てを含むプロトタイプを構築し、高エネルギー加速器研究機構の放射光施設を用いて機能試験を行った。結果、読み出し回路が必要な性能で正しく動作すること、また我々が目標とする最低のエネルギー25keVでも偏光に対して期待通りの感度を得られることを確認した。
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Research Products
(3 results)