2007 Fiscal Year Annual Research Report
高い分極性を持つ有機ラジカルと遷移金属の結合による空孔を持つ構造の構築とその物性
Project/Area Number |
05J08299
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
太田 明 Tokyo Institute of Technology, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | TCNQ / 遷移金属 / 磁性 / TTF |
Research Abstract |
年度当初より米国テキサス農工大、K.R.Dunbar教授のもとで研究を行った。TCNQ(7,7,8,8-tetracyanoquinodimethane)誘導体がそのシアノ基で結合することで、各種元素イオン(典型金属、遷移金属等)を架橋した高分子錯体を作成した。元素の種類および添加する第三の成分に従って一次元から三次元までのポリマーを単結晶として得た。室温で電場印加により電気抵抗のスイッチング現象を示すCu^I-TCNQは従来単結晶育成が困難とされてきたが、今回新たにCu^<II>の塩を用いる電解法により単結晶育成に成功した。さらにCu-(dibromo-TCNQ)およびTl-TCNQがCu-TCNQと類似の構造を持ち、導電率とその温度変化も類似していることを見出した(室温導電率〜0.1Scm^<-1>)。 空孔の形成と磁性および導電性を付与するために、4,4'-bipyridylと遷移金属、TCNQからなる錯体を作成した。既に京都大学、北川進教授のグループがZnイオンを用いた同様の錯体を発表しているが、TCNQが-2価およびσダイマーとなっており、導電性に欠ける。今回作成方法を変更することにより4,4'-bipyridylとZnイオンからなる鎖状構造と、部分還元状態(形式電荷-2/3)にあるTCNQの均一積層カラムが共存する錯体、Zn(4,4'-bipyridyl)(TCNQ)_3(CH_3OH)(H_2O)を得た。錯体中で2/3のTCNQがZnイオンにそのシアノ基で結合している。室温導電率は1.4Scm^<-1>で半導体的挙動を示した。帯磁率の温度変化は50Kに緩やかな極大値を持ち、TCNQカラム内での反強磁性的相互作用を示唆した。最近、Mn^<II>,Fe^<II>,Co^<II>,Ni^<II>,Cu^<II>についても4,4'-bipyridineとTCNQラジカルを含む錯体結晶の合成法を開発した。2,2'-dipylidylamine(2,2'-dpa)は二座の配位子となるシツフ塩基である。Cu^<II>(2,2'-dpa)_2(TCNQ)_2は構造が不明ながらTCNQが銅イオンに配位していると推測され、室温で比較的高い導電率(1Scm^<-1>)を示すことが知られている。本錯体の単結晶を得ると共に銅イオンをその他のイオン(Mn^<II>,Fe^<II>,Co^<II>,Ni^<II>,Zn^<II>)に置換することを試みた。結果として同型構造を持つM(4,4'-bipyridyl)(TCNQ)_3(CH_3OH)(H_2O)(M:Co^<II>,Zn^<II>)を得た。両錯体において金属イオンがTCNQダイアニオンおよびσダイマーで交互に架橋されたジグザグ鎖状構造が見出された。
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Research Products
(1 results)