2005 Fiscal Year Annual Research Report
ハイブリッド構造を有する抗生物質ガティンギマイシンの全合成研究
Project/Area Number |
05J08304
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
小山 靖人 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ハイブリッド分子 / o-キノール / PhI(OMs)_2 / 安定ニトリルオキシド / ベンザイン / イソオキサゾール / 分子内Red-Ox反応 |
Research Abstract |
生合成起源が異種の部分骨格が混在した構造を有する化合物(ハイブリッド分子)を合成する場合、既存の手法では矛盾する場合がしばしばあり、合成上多くの制限を受けた。これを解決するため、私はハイブリッド分子の合成を通して新しい視点に立ち、(i)狙った部位のみを特異的に高活性化する手法や、(ii)他の官能基に全く影響を及ぼさない官能基特異的な新反応の開発を目標とした。その結果、次のような成果を得ることが出来た。 (1)ビフェニル骨格の特性を利用した新規なo-キノール合成法を開発した。このキノールに対し適切なジエンを作用するだけで、簡便にナフタレンへと伸長できることを見いだした。 (2)7,8-Dioxy-7-arylbenzocyclobuteneに対し、今回開発したPhI(OMs)_2とヨウ素の混合物を作用させると対応するアントロン骨格を構築できることを見いだした。 (3)安定ニトリルオキシドに対してベンザインを作用させることで、天然物合成に有用なイソオキサゾール含有骨格を構築できることを見いだした。これは部分的に酸化可能な芳香族ユニットを有しており、適切な酸化剤によってキノンモノアセタールへと変換できることがわかった。また、分子内ベンゾイン生成反応によって、イソオキサゾールを含むα-ケトールへと誘導した。こうして得た骨格は、部分的に芳香化していない天然物(テトラサイクリンやテトラセノマイシン)の合成中間体として、非常に有用である。 (4)イソオキサゾール含有四環性骨格の分子内Red-Ox反応を見いだした。すなわち、この骨格に対して、過剰量のLDAを作用させるだけで、イソオキサゾールのベンジル位の引き抜きから始まるドミノ反応によって、アントロン骨格へと変換可能であることがわかった。この方法論はベンジル基を保護基に有している時も効果的に機能するため、周辺官能基の非破壊的な合成方法論であることを実証した。 以上、秀れた活性化剤の開発に加え、高エネルギー状態の出発物質を用いることで、触媒や活性化剤を用いなくとも、分子変換可能な合成経路を確立した。
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