2006 Fiscal Year Annual Research Report
量子スピン系におけるフラストレーションが引き起こす新奇な現象
Project/Area Number |
05J08594
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
得能 光行 東京工業大学, 大学院理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 一次元量子スピン系 / 量子相転移 / フラストレーション / 朝永・Luttinger液体 / ボース粒子 / Aharonov-Bohm効果 / リング型干渉計 |
Research Abstract |
本年度では,2つのテーマに対しての研究の進展,及び成果の発表を行った. (1)リング型干渉計におけるボース粒子の輸送現象とAharonov-Bohm効果についての議論 昨年度までに研究を行ってきた3本の量子スピン鎖の接合に関する研究を拡張し,リング型干渉計の形状をした系でのボース粒子の輸送現象について議論した.この系は,電子デバイスとしてメゾスコピック系でよく議論されている量子リングと同じ形状あり,従来のメゾスコピック系の議論では,リング内部に印加する磁束の大きさに対応して電子の位相の干渉効果(Aharonov-Bohm効果)が輸送現象に現れてくることが知られる.しかし,本研究での議論では,ボース粒子の輸送現象には,従来の議論から予測されるAharonov-Bohm効果が現れないという結論を得た. 本研究で議論は磁性体中のマグノンの運動についても同様の議論が成り立ち,フラストレーションがもたらす新奇な現象を理解する上でも重要な役割をする.この研究結果は実験研究に対しても大きな刺激となる. なお,本研究の成果は,2006年9月に行われた日本物理学会秋季大会にて発表された.また,2007年3月に行われたAmerican Physical Society March Meetingにても発表を行った. (2)幾何学的フラストレーションを持つ量子スピン鎖の基底状態にみられるリエントラント現象 昨年度から,幾何学的フラストレーションをもっ三量体スピン鎖における基底状態の研究を共同研究者と共に行ってきた.報告者は,この研究に関して,厳密対角化による数値計算と,レベルスペクトロスコピー法による得られたデータの数値解析を行った. この研究結果は,2006年8月に行われたInternational Conference on Magnetismにて,共同研究者によって発表された.
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