2007 Fiscal Year Annual Research Report
量子スピン系におけるフラストレーションが引き起こす新奇な現象
Project/Area Number |
05J08594
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
得能 光行 Tokyo Institute of Technology, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 冷却原子気体 / ボース粒子系 / 1次元量子多体系 / ボソン化法 / 朝永-Luttinger液体 / Ginzburg-Landau理論 |
Research Abstract |
本年度では,以下の研究テーマに着手した。本研究は現在Physical Review Letters誌に論文投稿中である. 1次元的に束縛された原子気体の基底状態における自発回転現象 1次元的に捕獲された原子気体について,1次元軸に垂直な面内でのボース粒子の運動の抑制が完全でない場合についての理論研究を行った.軸に垂直な面内での運動の量子化により,1次元的な分散関係に複数のバンドが現れる.多バンド構造が関わってくる物理の単純な場合として,我々は最低エネルギーバンドのみでなくさらに上の準位にもボース粒子が占有している場合について議論した.3次元空間中に調和型束縛ポテンシャルが存在する場合のボース粒子系を議論の出発点とし,キュムラント展開を用いて有効的な1次元の問題に縮約した.Ginzburg-Landau理論とボソン化法の手法を組み合わせることで,基底状態の性質を調べた.その結果,1次元的に束縛されたボース気体の基底状態はトラップ軸周りに関して自発的に回転していることが分かった. 1次元的に捕獲された原子気体の研究は,近年非常に活発に行われているが.理論研究では,最低エネルギーバンドにのみ粒子が占有している1次元極限を議論しているものが殆どであり.我々が議論した多バンド効果に着目した研究はない.今回の我々が得た研究結果は,多バンド系にこれまで知られていない物理が豊富に含むことを示唆するもので,今後の低次元冷却原子気体における新たな理論研究を促すものになると期待される. また,この系はフラストレートしたスピンチューブにおけるカイラル秩序とも密接に関係している. 上記の研究テーマに加え,我々は昨年度まで研究してきたテーマ ●Y字型ポテンシャル中のボース気体の動的現象 ●リング型干渉計におけるボース粒子の輸送現象とAharonov-Bohm効果についての研究成果をPhysical Review Letters誌に投稿し,論文出版が受理された.この論文は来年度出版予定である.
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