2005 Fiscal Year Annual Research Report
量子スピン系におけるフラストレーションが引き起こす新奇な現象
Project/Area Number |
05J08594
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
得能 光行 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 1次元量子スピン / 量子相転移 / フラストレーション / 三量体 / Y字型ポテンシャル / ボース粒子系 / 朝永・Luttinger液体 / Andree反射 |
Research Abstract |
本年度は以下の2つのテーマについての研究を行った。 (1)歪んだダイヤモンド型S=1/2 XXZスピン鎖の基底状態の相図におけるリエントランス (2)Y字型ポテンシャル中のボース気体の動的現象の解析 (1)は幾何学的フラストレーションを持つ歪んだダイヤモンド型S=1/2スピン鎖の基底状態について、XXZ型の相互作用の異方性パラメータを変化させたときの相の変化にリエントランスが見られることが新たにわかった。この研究は摂動論による解析計算と厳密対角化による数値計算の両面からアプローチしている。歪んだダイヤモンド型の幾何学的形状のスピン鎖の基底状態の相図には、異方性逆転現象という現象が現れることがこれまでの研究で分かっていたが、リエントランス現象は異方性逆転現象と密接に関係した、幾何学的フラストレーションを持つダイヤモンド型スピン鎖にみられる特徴的な現象である。 (2)は、Y字型の一次元空間に閉じ込められたボース粒子系において、一方のブランチから入射されたボース気体がジャンクションでどのような反射及び透過を起こすのかについて調べている。この研究では、低エネルギー有効理論である朝永・Luttinger模型の観点から解析的なアプローチを取っている。この研究の結果、Andreev反射という超伝導・常伝導接合系で見られるフェルミ粒子系特有の現象が、ボース粒子系でも観測できるという結論に達した。この結論は、粒子間の相互作用が短距離型で斥力的なものであれば相互作用の大きさによらず成立するもので、強磁性的なXXZ異方性相互作用のスピン系にも適用できる。 上記の研究は、本年度3月に行われた第61回日本物理学会年次大会で発表された。また、(1)の研究は岡本清美氏と坂井徹氏との共同研究で、(2)は押川正毅氏、Eugene Demler氏との共同研究である。
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