2005 Fiscal Year Annual Research Report
半導体ナノ構造におけるスピン光起電力の発生と光デバイスへの応用
Project/Area Number |
05J08601
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
早藤 潤人 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | スピン依存伝導 / 円偏光検出 / p-nヘテロ接合- / g因子 |
Research Abstract |
昨年度、我々はスピン依存光学遷移とスピン依存拡散電流を組み合わせた円偏光検出素子(Spin-Photodiode)を提案p-InGaAs/n-AlGaAs構造ヘテロ構造(g因子が異なる材料を組み合わせたp-n接合)を用いて研究を進めてきた。素子の品質が向上し、実際にナノアンペア領域ではあるがスピン起電力効果における拡散電流を実験的に検出することに成功した。 しかし、ヘテロ構造における接合部には急峻なバンド不連続があり、それがこの現象に影響を与えるかは未解明であった。そこで、我々はヘテロ接合のキャリア輸送理論とp-n接合太陽電池モデルを用いてシミュレーションをおこなった。その結果、スピン依存拡散電位を有するp-nヘテロ接合において、接合部に電子の電気化学的ポテンシャルの不連続のエネルギーの大きさよりも大きい順方向バイアスを印加した時、スピン偏極電子が注入されればスピン起電力の効果が出現することがわかった。またp-n接合のスピン起電力のモデルを発展させ、磁気二色性の効果も取り込んだモデルを構築しキャリアのスピン偏極から発生するスピン依存光電流と磁気二色性から発生する電流差を定量的に見積もることができた。これらよりスピン拡散電流で駆動するSpin-Photodiodeの知見を得ることができた。 上記のシミュレーションの結果からスピン依存拡散電流はヘテロ接合部に順方向のバイアスを印加すると、大きくなることを定量的に見積もることができた。そして作製した素子に左右円偏光を照射した際の各バイアス下におけるスピン拡散電流の依存性の測定をおこなった。その結果、順方向にバイアスを増大していくとスピン拡散電流も増大していき、その値は予想される理論値(スピン偏極率0.7%)と一致した。 これはスピン起電力効果を世界で初めて実証したことを意味し、半導体中のスピン拡散伝導を利用した新しいスピン検出手段を実現したという意味で、極めて先駆的かつ先導的な研究成果である。
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Research Products
(2 results)