2007 Fiscal Year Annual Research Report
半導体ナノ構造におけるスピン光起電力の発生と光デバイスへの応用
Project/Area Number |
05J08601
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
早藤 潤人 Tokyo Institute of Technology, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ヘテロスピン伝導 / 空乏層スピン伝導 / 円偏光検出 / p-nヘテロ接合 / g因子 |
Research Abstract |
初年度、二年度、我々はスピン依存光学遷移とスピン依存拡散電流を組み合わせた円偏光検出素子(Spin-Photodiode)を提案しp-InGaAs/n-AlGaAs構造のエネルギー不連続の大きさよりも大きい順方向バイアスを印加した時、スピン偏極電子が注入されればスピン起電力の効果が出現することがわかった。またp-n接合のスピン起電力めモデルを発展させ、磁気二色性の効果も取り込んだモデルを構築しキャリアのスピン偏極から発生するスピン依存光電流と磁気二色性から発生する電流差を定量的に見積もることができたが、見積もったスピン偏極率は小さかった。 そして最終年度にあたる本年度はp-nヘテロ接合において検出されたスピン偏極率が小さくなってしまった原因を探索した。考えられる原因は二つあり、一つ目はp-nヘテロ接合内で発生する空乏層の存在、二つ目はヘテロ界面でのバンド不連続によるスピン偏極率の劣化である。前者はイオン化ドナー・アクセプターによる内部電界によるスピン偏極率の劣化である。この影響は現在のところ明らかにされておらず、散乱されたキャリアに対してスピンを緩和させる有効磁場として働くかもしれない。この影響を光学的手法で調べた結果、拡散支配伝導では空乏層を横切るキャリアのスピン偏極率はほとんど低下しないことを明らかにした。後者のキャリアのスピン偏極率と伝導帯のエネルギー障壁の関連性を実験的に調べだ。それは二年度に構築したスピン輸送モデルを再検討する結果となった。すなわち、p層に注入された電子キャリアのホットエレクトロン状態が伝導帯のエネルギー不連続を解消する効果となって顕れている。以上のように三年間で半導体構造のみでスピン検出の礎を築いたといえる。
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