2007 Fiscal Year Annual Research Report
誘電分極現象に着目した有機ナノ界面膜の評価手法および柔らかいナノ構造体の物性
Project/Area Number |
05J08616
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
山本 哲也 Tokyo Institute of Technology, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 水面上単分子膜 / 誘電分極現象 / 配向オーダーパラメータ / 静電エネルギー / ジオメトリー / Shape equation / Maxwell応力 / キラル相分離 |
Research Abstract |
前年度に、キラル棒状分子(DPPC)からなる単分子膜が、分子のキラリティーに依存したドメイン形状を形成することを実験的に確かめ、ドメインから発生する電気四重極子密度がそのドメイン形状のキラル依存性に重要な役割を果たすことを理論的に示した。右手キラル分子と左手キラル分子を混合して作成されるラセミ単分子膜から発生する誘電分極現象を測定しながら、ドメイン形状を観察した。その結果、右手分子と左手分子が混ざり合ったドメインが形成し、ドメインが大きくなると内部でキラル相分離が起きていることを示唆するスパナ形のドメイン形状が形成された。今年度は、さらにドメイン内部のキラル相分離を確かめるために、初年度に作成したBrewster角反射光測定法(BAM)の偏光測定を可能にして、Maxwell変位電流法、光第二次高調波測定法と合わせることによって、水面垂直方向の配向だけでなく、面内の配向も測定することを可能にした。これによって、初年度に掲げた目標の一つである、誘電分極現象の全体像を掴むことで、膜構造を総合的に評価できるシステムが構築できたことになる。しかし、スパナ形のドメインが形成されるほど大きなドメインを再現することが困難であり、キラル相分離が起きたときに予測される配向分布の非連続性の観測にはまだ成功していない。一方、理論的には、ラセミ単分子膜ドメインの静電エネルギーを解析することにより、静電エネルギーを最小化によってキラル相分離が起こり、電気四重極子密度がキラル相分離に重要な役割を果たすことを示した。これまでは、静電エネルギーを含む自由エネルギーの最小化から、安定なドメイン形状を理論的に調べてきた。ドメイン形状の形成の物理的描像をさらに明らかにするために、ドメイン境界の力学的平衡に注目してshape equationを求め、静電エネルギーがMaxwell応力として力学的平衡に寄与することを明らかにした。
|