2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J08650
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
森 啓二 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 軸不斉 / 軸不斉スチレン / 回転障壁 / 光学活性スルホキシド / 合成素子 / ビアリールジアルデヒド / 不斉全合成 |
Research Abstract |
近年、軸不斉要素を有する触媒や反応剤の開発研究が盛んに行われ、多くの有用な不斉誘起法が見出されている。これに対し、反応基質自体が有する軸不斉を利用し新たな不斉を誘起する試みは、置換基の嵩高さや熱的な条件によりラセミ化が進行しやすい危険性等の困難な問題が生じるため、ほとんどなされていない。このような背景の下、筆者は、「軸不斉」という一見すると取り扱いづらい不斉情報に注目し、それを利用した新しい様式の不斉誘起法の開発を目的とし、研究を行った。特にこれまでほとんど注目されてこなかった、芳香環とビニル基まわりに軸不斉を有するスチレン(軸不斉スチレン)類縁体を合成し、それらの軸不斉の安定性を確認するとともに、その不斉情報を新たな軸不斉や中心不斉へと変換するという方法論の開発を目指した。その結果、芳香環の両オルト位、およびそれとビニル基とを結ぶ結合(以下、スチレン軸と称する)に最も近いビニル位に嵩高い置換基を導入する事で、その軸周りの回転障壁を大幅に向上することができる事を見いだした。また、ビニル基上の置換基として光学活性なスルホキシド基を選択すると、その軸不斉のジアステレオ選択的な制御も可能となることを明らかにした。さらに、軸不斉スチレンの合成素子としての有用性を示すため、血管新生阻害活性を有する抗生物質TAN-1085の合成研究を行った。その結果、軸不斉スチレンの軸不斉の不斉情報を、鍵中間体であるビアリールジアルデヒドのビアリール結合周りの軸不斉へとほぼ立体特異的に変換する事ができるという事が分った。さらに、この軸不斉を目的物質のアグリコン部が有する1,2-ジオール部位の中心不斉へと完全に転写できるということが分った。現在、このものの不斉全合成を目指し、鋭意研究を行っている。
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