2005 Fiscal Year Annual Research Report
チェルノブイリ原発事故とベラルーシ・ロシア・ウクライナにおける原子力の表象の歴史
Project/Area Number |
05J08708
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
越野 剛 北海道大学, スラブ研究センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | チェルノブイリ / 原子力 / 核戦争 / ベラルーシ / ロシア / ウクライナ / 原発事故 / 病気 |
Research Abstract |
1 日本ロシア文学会全国大会(10月9日、早稲田大学)で、「ドストエフスキーとロシアにわける火事のイメージ」と題する研究発表を行った。これは特別研究員採用以前から行っている「病気の文化史」研究の成果のひとつであり、帝政ロシア期における火事イメージを、民衆(ナロード)や女性による放火という言説やドストエフスキーの持病である癲癇の文学的イメージと関わらせて論じたものである。 2 スラブ研究センターの冬季国際シンポジウムにあわせて研究会「ロシア・スラブSF幻想文学の世界地図」を開催し(12月17日)、そこで「ソ連時代の核戦争小説について」と題する研究発表を行った。アレクサンドル・カザンツェフ、・アレシ・アダモヴィチ、ヴャチャスラフ・ルイバコフという世代の異なる三人の作家の作品を取り上げげ、「核戦争による世界滅亡」というイメージが、チェルノブイリ事故が起きてペレストロイカが始まるよりも前の80年代前半に確立していたことを明らかにした。 3 ベラルーシおよびウクライナに調査旅行(1〜2月)を行い、現地の図書館を中心に原発事故に関する文献を収集した。ベラルーシでは90年代前半に事故関連の新聞雑誌記事が急増しており、同国独立(1990)後のナショナリズム高揚と環境問題への関心が結びついていることを明らかにした。チェルノブイリに関する作品の多い詩人ミコライ・ミャトリツキーと「チェルノブイリ基金」代表の作家ヴァシリ・ヤカヴェンカに会うこともできた。調査が不足していたウクライナでは、同国における「チェルノブイリ文学」の主なる作品リストを入手することができた。ウクライナ科学アカデミー文学研究所のタマーラ・フンドロヴァ教授と会い、今後の研究の協力を了承してもらった。 17年度の研究計画のうちベラルーシ・ウクライナでの資料収集は3によって達成することができたが、「チェルノブイリ文学史」の叙述は完成させることができなかつた。2は18年度の研究計画にある「ソ連における原子力表象の歴史」を一部先取りするものとなった。1は「災害や病気をめぐるロシア文化史」というより大きな枠組みに属すべき研究である。
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Research Products
(2 results)