2006 Fiscal Year Annual Research Report
チェルノブイリ原発事故とベラルーシ・ロシア・ウクライナにおける原子力の表象の歴史
Project/Area Number |
05J08708
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
越野 剛 北海道大学, スラブ研究センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | チェルノブイリ / 核戦争 / 原発事故 / ペラルーシ / ロシア / ソ連 / 反戦運動 / 歴史意識 |
Research Abstract |
(1).前年度末に研究会で発表した「ソ連時代の核戦争小説について」を元に研究論文を執筆した。アレクサンドル・カザンツェフ、アレシ・アダモヴィチ、ヴャチェスラフ・ルイバコフという世代の異なる三人の作家の作品を取り上げて核戦争に関する意識の変移を考察した他、80年代前半の新冷戦期にヨーロッパで高まった反戦運動がソ連社会でも反映を見出していたことを明らかにした。論文は北海道大学スラブ研究センター21世紀COE研究報告集に掲載される予定である。 (2).SFと核戦争小説の研究に関連して、「歴史改変小説」というSFジャンルを題材にして現代ロシアにおける歴史意識の変遷を研究した。ソ連崩壊後の混乱からプーチン体制の確立するまでの1990年代後半期に、「帝国への郷愁」というべき心性が小説を初めとして様々な文芸ジャンルに見られるようになったことを明らかにした。2006年10月の日本ロシア文学会研究発表会、12月のスラブ研究センター国際シンポジウムで報告を行い、雑誌『SLAVIANA』に論文を掲載した。スラブ研究センター発行の21世紀COE講座シリーズにも掲載される予定。 (3).2007年2月にロシア(モスクワ)およびベラルーシ(ミンスク)に調査旅行を行い、現地の図書館を中心に原発事故や核問題に関する資料を収集した。文学作品や新聞雑誌記事などの関連資料を広く調査することができた。ベラルーシの文学研究者アダム・マリジス氏などから研究上の貴重な助言もいただいた。 18年度の研究計画のうち「ソ連における原子力表象の歴史」は(1)の核戦争小説の比較研究という形でまとめることができたが、前年度の「チェルノブイリ文学史」の叙述は宿題として残っている。(2)の歴史意識の研究は(1)をもとに今年度から始めた新テーマだが、本研究課題からはやや外れる派生的なものであった。(3)の調査旅行で得た新たな資料をもとに最終年度の研究に取り組んでいきたい。
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Research Products
(2 results)