2007 Fiscal Year Annual Research Report
チェルノブイリ原発事故とベラルーシ・ロシア・ウクライナにおける原子力の表象の歴史
Project/Area Number |
05J08708
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
越野 剛 Hokkaido University, スラブ研究センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | チェルノブイリ / ベラルーシ / ロシア / 歴史意識 / 集合的記憶 / 戦争 |
Research Abstract |
今年度は三年間の研究の成果をまとめ、社会に還元するようなかたちで総括的な仕事をいくつか行うことができた。北海道大学スラブ研究センターの主催した市民向け公開講座「拡大する東欧」の中で、チェルノブイリ原発事故について講演した。その内容については雑誌「しゃりばり」およびスラブ研究センターのホームページに掲載されている。これまでの研究で得た成果を用いながら、現代ベラルーシの国民形成にとってチェルノブイリ事故が大きな影響を及ぼしていることを説明している。 チェルノブイリの医療支援に長年携わっている長崎医大の山下俊一先生のイニシアチブにより、ベラルーシの詩人リホール・バラドゥーリンの作品を翻訳することができた(『バラドゥーリン詩集:風に祈りを』越野剛訳、春風社、2007年)。バラドゥーリンはベラルーシの代表的な詩人の一人で、ノーベル文学賞候補としてベラルーシ作家同盟から推薦されたこともある。今回訳出した詩の多くにはチェルノブイリ原発事故や放射能の恐怖のもとで暮らす人々の生活が描かれている。 2月には3週間のモスクワ出張を行い、国立図書館などで資料を収集した。チェルノブイリ原発事故だけではなく、災害の記憶と結びついて連想されるような歴史的事件にも関心を広げるように努めた。とりわけ第二次世界大戦とナポレオン戦争の記憶はロシア・ウクライナ・ベラルーシ地域の人々にとって重要な意味を持っており、今後の研究にもつなげていきたい。
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